鎌倉朝日新聞 (6月1日号 2022年 第519号)

鎌倉朝日新聞社

登場人物の衣装などドラマに合わせて更新=大河ドラマ館・鎌倉

鎌倉殿の13人
大河ドラマ館来館5万人達成

6月からドラマで使用した義経の甲冑を展示

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放映に合わせ3月1日鶴岡八幡宮境内に開設された「大河ドラマ館」の入館者が5月3日、開館64日目にして5万人に達した。 同館は、大河ドラマの放送を契機に、鎌倉の歴史・文化を全国に発信するとともに、観光振興による地域の活性化を図ろうと設立した大河ドラマ「鎌倉殿の13人」鎌倉市推進協議会が運営する。同協議会では、鎌倉観光公式ガイドの作成や大河ドラマ関連情報発進の特設サイト開設、全国でも珍しい「しゃべる肖像ポスター」、鎌倉殿の13人の重臣ゆかりの地周遊マップの作成、シンポジウム、大河ドラマ館発ガイドツアーなどを行っている。 大河ドラマ館の展示は、ドラマの進行に則して展示内容が更新されていて、6月からはドラマで使用された義経の甲冑が展示される。小道具も追加され、目玉は上総広常の祈願書。4Kシアターには大倉幕府のメイキング映像も加わる。 大人千円、小人5百円。※入館時に受け取るパンフレットの提示で鎌倉国宝館・鎌倉歴史文化交流館各1回無料で入場可。(来年3月末まで)。 期間中何度でも入場できる年間パスポートも。 感染症対策のため事前予約を勧めているが、当日券でも入館できる。 同協議会の久保田陽彦会長は「これからも情報を発信して大勢のお客様を迎えて盛り上げていきたい」と話している。


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来場した少女と話すロボット

分身ロボットと話そう

障害者在宅就労
 市が実証実験

鎌倉の大河ドラマ館のおみやげコーナーで5月から遠隔操作ロボット(分身ロボット)が稼働している。 市が、在宅就労の実証実験として、オリィ研究所(東京都中央区)との協定に基づき、運用しているもので、ロボットが同ドラマ館のみやげものの紹介などをしている。 ロボットの名称は「OriHime(オリヒメ)」。高さ約20㎝で目を光らせて、手(翼)を開いたり閉じたりして会話する。オリヒメのおでこに搭載されたカメラを通して、目の前の相手や、館内の様子を自分のパソコンに映して会話するのは、パイロットと呼ばれる業務委託の人たち。障がいのある人や、外出や就労に困難を抱える人たちが交代で対応。全国の20~50代の男女6人が登録している。 5月18日に担当した今井道夫さん(37)は、30歳のとき、身体表現性障害という病気で、勤めに出られなくなった。3年ほど前からオリヒメを活用して、沖縄のリゾテックEXPOで通信技術の説明をしたり、和歌山県のアドベンチャーワールドの仕事をしている。 「もともとコミュニケーションが苦手だったが、自分がどう見えているか気にせず仕事ができていい」と、はっきりとした口調で話していた。 ロボットの稼働は平日の午後2時半から4時半まで。期間は12月28日までの予定。


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鎌倉みほとけ紀行(121)

昌清院・十一面観音菩薩立像

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で盛り上がる鎌倉。鎌倉国宝館では「北条氏展」が開かれ賑わいを見せ、足繁く自分も拝観に向かいます。 仏像の展示室には多彩な御仏(みほとけ)さん方がおられ、時々何かこちらにやさしい目線を送ってくるような感じがします。そう、こちらが銅造十一面観音菩薩さまです。 像の縁(えにし)を調べてみますととても興味が沸きました。それは京都天龍寺(筆者の修行した寺)の開山夢(む)窓(そう)疎(そ)石(せき)(円覚寺第十五世・瑞泉寺開山など、また七人の帝(みかど)から国師号を賜ったことから七(しち)朝(ちょう)帝師(ていし)といわれた室町期の高僧)が鎌倉山崎の地に北野神社(山崎天神)を勧請(かんじょう)、その本地仏(ほんじぶつ)がこの十一面観音の原型であったというのです。(諸説あり) 気になって山崎・北野神社に参詣しました。天神山参道の階段を、息を切らしながら登ると、社が静かに建っています。現在は樹木が多いですが当時の見晴らしのよさが伝わってきました。 まさにこの景勝地に夢窓国師は暦応年中に天神を祀り、山崎・宝積寺という寺を建て観音堂に本尊として四尺の十一面観音を安置したのではないかと伝えられています。 やがてその旧本尊を模造し銅造にしたものが現在の銅像十一面観音であるといわれます。宝積寺はすでに廃絶していますが、円覚寺塔頭黄梅院の末寺で、夢窓派の拠点であった古刹です。
後に近くの昌清院(臨済宗円覚寺派塔頭如意庵兼務)に移され、現在は鎌倉国宝館に委託所蔵されています。黒々と鈍く輝く像は重厚でありながら、そのお顔は微笑を浮かべやさしい気持ちにして下さいます。 銅造、像高150㎝、南北朝時代。


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「ひと」
鎌倉市中央図書館館長に就任した

栗原 章郎(くりばやし あきお)さん

借りたいだけ借りた本をかばんに詰め込み、ワクワクして帰った。宝の山のように思えた。小学生のころの思い出だ。 鎌倉市材木座で生まれ育ち、いまも住む。慣れ親しんだ中央図書館の館長に、4月1日付で就任した。直前は総務部コンプライアンス課長。33年の市職員生活のなかで、障害者福祉や保育関係の担当が半分を占める。市教委の部局は初めてだ。 「これまでは外から見ていたが、中に入って、職員がそれぞれ熱意をもって取り組んでいるのを、目の当たりにした。仕事は大変でも助け合っていけば乗り切れる」。 今年度は鎌倉市の「第3次図書館サービス計画」と「第3次子ども読書活動推進計画」の最終年度。次の子ども読書活動推進計画の策定に向けた連絡会が3月に発足した。パソコン、スマホ、ゲーム機と、子どもを取り巻く環境が変化し、読書の時間が減っている。図書館を中心に保育園、幼稚園、学校などの関係者が集まり、活字離れをなくす知恵を絞っている。 3年前には「読書バリアフリー法」ができた。障害者や高齢者、外国語を母語にする人らに、活字文化に接する機会を提供する取り組みも進む。中央図書館の2階には、視覚障害者のために本を読みあげてくれる機械「よむべえ」や、拡大読書機が置かれている。 読書好きは母親譲りだ。母親に頼まれて、図書館の本を借りてくることも多かった。その母が昨年12月に亡くなった。最後の1年は視力が落ちていたが、本を読みたいといい続けていた。本好きに応えたい気持ちは強い。 NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響で、「源頼朝の絵がありませんか」などと、メディア関係や市外からの問い合わせが増えている。 今年、開設111年。神奈川県で最も古い図書館だ。歴史のある街だけに、郷土資料が充実しているのも特徴だ。古絵図、古文書、錦絵などはデジタル化も進めている。近代史資料室には、旧家から寄贈された明治以降の膨大な資料や写真が集まっている。 飲食禁止やマスク着用の要請は続くが、コロナ禍で制約はようやく元に戻りつつある。ただ「10冊まで」の制限をはずしたところ、貸し出しの総数は減っていないという。 鎌倉市図書館のキャッチフレーズは「つながる ひろがる 100年図書館」。「市民の身近な図書館であり続けたい」と話している。56歳。
(文・写真 眞田正明)


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ケネス・アーミテーシ 訪問者たち 1961 フロンス 神奈川県立近代美術館蔵

み る

▼川喜多映画記念館
企画展「追悼・山内静夫 松竹大船撮影所物語」 6月12日まで。鎌倉に生き、鎌倉を愛した名プロデューサーを偲び、松竹大船撮影所と映画文化の歩みを辿る。2百円。
▽関連上映 6月1・3日14時、4日10時半「滝を見にいく」2・4日14時「東京ウィンドオーケストラ」3日10時半、5日14時「恋人たち」7日10時半、8・10・12日14時「渦」7・9・11日14時、12日10時半「利休」各千円、小中学生5百円。
23 ・2500
▼現代美術 草間彌生・李禹煥他
ギャラリー伸 244081
▼草野啓利 吹きガラス展 6月30日までギャラリー一翆堂。無料。
22・3769
▼村田良策記念アトリエM合同展
6月5日まで鎌倉生涯学習センター。創立54年のアトリエM(主宰・村田佳代子さん)3教室生の水彩、パステル、デッサン。名画模写作品など110点。
22・1759
▼北条氏展vol.2 鎌倉武士の時代 ー武士の姿への憧憬
6月12日まで鎌倉国宝館。鎌倉武士が画題の浮世絵版画や屏風絵、武具の展示。7百円。
22・0753
▼いのちと平和を考える映画祭
6月10・11日、逗子文化プラザ。10日10時半・11日14時「荒野に希望の灯をともす」―医師・中村哲の35年間の実践と思索。10日14時・11日10時半「ヒロシマへの誓い」―サーロー節子とともに。各回7百円。
逗子・葉山九条の会富塚方 046 ・878 ・6044
▼これってさわれるのかな?彫刻に触れる展覧会
6月11日~9月4日県立近代美術館鎌倉別館。コレクションの中から24点のさわれる彫刻作品を展示。多様な素材の感触を楽しむ。250円。
22・5000
▼洞窟遺跡を掘る―海蝕洞窟の考古学
6月26日まで県立歴史博物館。県立歴史博物館が発掘した間口洞窟遺跡など三浦半島の洞窟遺跡で出土した資料から、そこに生きた人々の姿、考古学の魅力を伝える。7百円。
045・201 ・0926
▼兼好法師と徒然草
7月24日まで県立金沢文庫。『徒然草』と歴史史料から兼好と彼の生きた時代を読み解く。5百円。
045・701・9069



さんか

▼鎌倉ガイド協会 古都鎌倉史跡めぐり
A鎌倉文士の愛した雪ノ下、西御門を歩く 6月3・7・9日9時半鎌倉駅西口時計台広場集合。鎌倉駅から川喜多映画記念館まで約3㎞。
B潮騒の調べに小坪の歴史を紐解く 6月20・22・28日9時鎌倉駅西口時計台広場集合。亀の前事件、頼家相撲高覧ゆかりの地小坪を巡る。約1・5㎞。
C花爛漫の大船へ「そうだ!植物園へ行こう」
6月16・24日9時半大船駅南改札集合。大船観音寺、大船フラワーセンターなど。約2㎞。
各7百円。交通費、拝観料別。HPから要申込。
▼第5回漁港船上市場
6月5日9時、小坪漁港岸壁。サザエ、タコ、シラスの販売や漁師の店。小坪漁業協同組合主催。
逗子市観光協会 046 ・873・1111
▼鎌倉ユネスコ協会
▽バザー6月12日10~14時、同会深沢倉庫(深沢中学へ上る手前の信号右折の長屋)。毎月第2日曜、雨天開催。※献品受付衣類・着物・雑貨・支援用食糧品。
44・9830
▽書きそんじハガキでアジア寺子屋支援未使用切手・プリペイドカードなども可。鎌倉市御成町11―2ヤノヤビル2Fへ。
080・602・9498
▼ふらっとカフェ鎌倉
食を通じて多世代交流
▽6月17日17時半~18時半二階堂デイサービスセンター。音楽を楽しむ会&テイクアウト。▽22日16~18時ソンベカフェ。各子ども2百円、大人5百円。テイクアウト5百円。
メール予約flatcafekamakura@gmail.com
渡邉方 090・5199・1654
▼逗子の市(雨天中止)
亀岡八幡宮境内。
▽フリーマーケット6月24日9~15時。雑貨・衣類 ・手造り品など約20店。
▽骨董市25日8~15時。
※フリマ・骨董出店者募集。
片岡方 090・5442・3778
▼北鎌倉・台峯の緑をともに
▽山の手入れ6月18日10時、山ノ内配水池脇。
▽山歩き19日9時、山ノ内公会堂。
北鎌倉の景観を後世に伝える基金・望月方 45・7420
▼鎌倉生涯学習センターフェスティバル
6月24~26日。▽発表部門 朗読、コーラス、楽器演奏、舞踏、合唱など。▽展示部門 水墨画、書道、デッサン、手芸。バザー、映画上映、人物画講座も。
25・2030


鎌倉朝日新聞社

宮田大さん

鎌倉朝日新聞社

鈴木崇朗さん

き く

▼鎌倉の15人
6月8日19時、鎌倉生涯学習センター。時空を超えた文化の出逢い。室内合奏コンサート。ビバルディ四季より「春」ほか。
かまくら藤家 73・8492
▼湘南コンサートの会
鎌倉からパリへ~国際的ピアニスト鈴木隆太郎
6月4日13時・15時半。藤沢リラホール。ベートーヴェン「熱情」リスト「ドン・ジョバンニの回想」など。3千円、 学生2千円。
同会 080・7383・7617
▼躍動のチェリスト宮田大with 湘南エールアンサンブル特別公演
6月30日18時、藤沢市民会館(19時半頃終演予定)。ドボルザーク「チェロ協奏曲ロ短調作品104」、シューベルト「未完成交響曲」など。3500円、学生2千円。
湘南エールアンサンブル 080・7383・7617
▼Tango Nuevo2
7月10日14時、鎌倉生涯学習センター。タンゴ界の革命児ピアソラ生誕百年記念コンサートの第2部。鈴木崇朗さん(バンドネオン)、村田望さん(歌)、らで「アディオス・ノニーノ」など。4千円、小中学生2千円。
スタジオエスポワ―ル 090・2207・0031



まなぶ

▼第11回歴史講演会「鎌倉殿と小坪」吾妻鏡から見える不思議な小坪領域6月12日10時、逗子文化プラザ。講師は鎌倉考古学研究所理事・伊藤一美さん。7百円。
逗子の歴史を学ぶ会今泉方 090 ・8916・9574 ▼こどものための手作り絵本講座
7月30日・8月1・3・15日全4回、10時・13時半。講師は絵本作家山本省三さん。2千円。小学生以上対象。
逗子文化プラザ 046 ・870・6622
▼学習センターの催し
鎌倉市在住者優先。申込は催し名、住所、氏名、を明記し往復ハガキで各センターへ。
【玉縄学習センター】
ズンバで楽しくフィットネス 7月5・19日13時半。無料。岡本2―16―3。20日必着。
44・2219
【大船学習センター】
遠藤周作文学の世界を見る 7月9・16・23日13時半。「沈黙」「深い河」などから人間を考察。無料。大船2―1―26。20日必着。
45・7712
【鎌倉生涯学習センター】ポルトガル語講座「入門クラス」 7月13・20・27日、8月3日18時半。無料。e-kanagawa電子申請。7月6日締切。
25・2030
【腰越学習センター】
南インド古典舞踊とインド神話・文化 7月17日14時。古典舞踊の演舞、神話や文化の紹介。無料。腰越864。7月7日必着。
33・0712



購入新図書のリスト抄

鎌倉市中央図書館(4月分)

鎌倉市中央図書館(25・2611)は4月に一般200冊、児童書10冊を収蔵した。一般的なものは下記の通り。 ▼「世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた」中野信子著 アスコム ▼「日蓮の手紙」日蓮著 植木雅俊訳・解説 KADOKAWA(角川ソフィア文庫) ▼「源家滅亡-尼御台所政子と北条義時の時代」菊池紳一著 山川出版社 ▼「源氏の血脈-武家の棟梁への道」野口実著 講談社(講談社学術文庫) ▼「北条義時と鎌倉がわかる」毎日新聞出版(毎日ムック) ▼「最後の講義完全版これからの時代を生きるあなたへ-安心して弱者になれる社会をつくりたい」上野千鶴子著 主婦の友社 ▼「和辻哲郎建築と風土」三嶋輝夫著 筑摩書房(ちくま新書) ▼「古民家再生物語-築百年(明治末期)の古民家再生工事その全容」長谷川和男著 南風舎 ▼「森と木と建築の日本史」海野聡著 岩波書店(岩波新書) ▼「図説なつかしの遊園地・動物園」生田誠著 河出書房新社(ふくろうの本) ▼「お金のなる木を育てなさい-世界一やさしい副業・投資の始め方」小林昌裕著 朝日新聞出版 ▼「禅と出会う」横田南嶺著 春秋社 ▼「ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門-世界96カ国で学んだ元外交官が教える」山中俊之著 ダイヤモンド社 ▼ 「EXTRA LIFE-なぜ100年間で寿命が54年も延びたのか」スティーブン・ジョンソン著 朝日新聞出版




鎌倉朝日新聞社

新 刊『朝日新聞記者の200字文章術~極小コラム「素粒子」の技法』

真田正明 著

「意外と書けない、短くてわかりやすい文章を書く技術!」と帯に書かれている。LINEやSNSなど、日常的に短い文章を書く機会が増えているが、要領よく思いを伝えるのは難しい。 朝日新聞夕刊1面のコラム「素粒子」を7年半書き続けてきた真田正明さんが、簡潔な文章で言いたいこと、思いを伝える書き方のノウハウを示す=写真。 1956年、大阪生まれ。京都大学文学部哲学科を卒業後、1980年、朝日新聞入社。警視庁キャップ、プノンペン・ジャカルタ支局長、アジア総局長などを経て論説副主幹を勤め、2021年退社。2015年に都内から鎌倉に転居、「海と山と歴史のある街が大好き」と鎌倉検定2級取得、街に慣れ親しむ。現在、京大ラグビー部OBとして百周年記念誌の編さんに関わる。 「コツがあるのでそれを押さえれば誰でも書ける。エピソードもあるのでお話としても楽しんでもらえれば」と話す。
1500円(税別)、さくら舎刊。
※真田さんは、鎌倉朝日2月号から「ひと」欄を担当しています。


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鎌倉の城郭展

鎌倉城の遺構をさぐる

鎌倉市植木の龍寶寺境内の玉縄歴史館で「鎌倉の城郭展」が開かれている。鎌倉在住の日本画家で歴史研究家の大竹正芳さんが=写真、30年ほど前から日本城郭史学会の仲間たちと鎌倉幕府滅亡の地である東勝寺跡周辺、源頼朝墓、法華堂跡周辺の調査実測、市文化財課の指導のもと荏柄要害の発見と調査を行った。その成果を永福寺の実測図、杉本城網張図などとともに初公開。2012年の玉縄城築城5百年祭を契機に玉縄城の遺構の確認、実測を行い書き下ろした鳥観図や遺構図なども展示している。玉縄城址まちづくり会議主催。 9月13日まで。入館料2百円。
45・7411


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季節の心(67)

海の囁きを聴く 佐伯 仁

真珠は育つ母の愛で
6月。誕生石は真珠。古来、真珠は貴重な交易品。「魏志倭人伝」には倭国の特産品に「真珠・青珠」を挙げている。 中国では水中の宝石は珠、山の宝石は玉と呼んでいる。なかでも古代中国では真珠は瑪瑙や琥珀と共に貴重な七宝。 また我が国、正倉院には聖武天皇の礼服、冠の装飾品としてビーズで繋いだ真珠3830個が収蔵されている。ヨーロッパへはシルクロードを経て真珠は「オリエントの富」と讃え、支配者の象徴になった。マルコポーロもコロンブスも日本の真珠に憧れた。 画家フェルメールも少女の真珠の耳飾りに魅かれ絵筆をすすめた。またフランスの詩人、コクトーの「私の耳は貝の殻、海の響きを懐かしむ」の詩句は真珠の心を呟いたモノローグではないか。 一方、江戸期、長崎大村湾の真珠は盛況を博したが、やがて御木本幸吉が1894年(明治27)に真珠養殖に成功。日本真珠ブームが到来。 現代ではオーストラリアやタヒチで養殖は盛んで時代の推移が窺える。 海育ちの真珠には母の温もりがある。それは漢字の海には「母」がいるからか。
 刻々と真珠は育つ
  夏の海  松尾いはほ


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心のふる里を行く(46)

神道と古事記が伝える日本人の生き方 池田雅之

4月中旬、4年振りに生まれ故郷の三重県に妻と一泊二日の旅をした。コロナ禍の影響で遠出が出来なかったせいである。今回の旅の目的は、三重県鈴鹿市にある椿大神社の宮司山本行恭氏との不思議なご縁に導かれての対談であった。 この3カ月、ロシア軍によるウクライナ侵攻に心煩わされていたので、ふる里の椿大神社に参拝し、初対面の山本宮司とお話が出来るのは、大いなる喜びであった。この対談の様子は、人間学を学ぶ月刊誌『知致』5月号に「子々孫々に遺しておきたい日本の心」と題して紹介されている。私にとってこの対談は、世界難ともいえるコロナ禍とウクライナ侵攻に対して、平和の祈りのメッセージを世界に届けることであった。 2月下旬、ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって以来、古事記の道開きの神・猿田彦大神と困難な状況に風穴を開けるアメノウズメ命の二柱の夫婦神のドラマがしきりと思い出された。この猿田彦大神とアメノウズメ命の夫婦神は異なる二つの世界(国津神=地上世界と天津神=天上世界)をつなぎ、世界の平和を達成してゆく神々なのである。 そんな思いを抱いている矢先、山本宮司との祈りの対談が実現したのは、「知致」編集部の導きとはいえ、私には、大いなるシンクロニシティーであった。 というのも、椿大神社は伊勢国一の宮で、まさしく猿田彦大神とアメノウズメ命を祀る神社であったからだ。椿大神社は、猿田彦大神を祀る全国2千余社の大本宮として、創設2025年の歴史を刻んできた古社であり、格式ある本殿のたたずまいからは、すがすがしさが漂っていた。 対談は、まず日本人の祈りのあり方から始まった。祈りの力、言霊の力について語りあった。そして宮司から、日本人の心の底に流れている神道の教え、「かんながらの道」について、お教えをいただいた。 山本宮司は、神道の教えは、生活の実践の哲学だとおっしゃった。人として踏むべき道や常識に添う生き方が、神道の基本の教えである。つまり、「かんながら」とは神の御心にそって、人間としてあるべき道を歩むことだという。 『古事記』には、人道にもとる行為(天津罪と国津罪)といった日本人のモラルのあり方がはっきりと記されており、その意味で、古事記は神道の教えの良き教科書ともいえる。子々孫々まで伝承しておきたい神道の教えが満載されているのが、古事記である。猿田彦大神とアメノウズメ命の神話は、異質な人間同士が、いかに和合して道を開いていくかを語っている。今日のコロナ禍とウクライナ侵攻を考える上でこの夫婦神の神話は示唆的なものを含んでいるといえよう。
(早稲田大学名誉教授・鎌倉てらこや顧問)



終の棲み家を考える(97)

不動産~借地 (旧法)

土地を貸したり借りたりすることはよくあることです。先の大戦の空襲などで家を失い、先ず住むことが先決で土地を貸してもらえれば、小さな家でも建てて生活することが急務でした。土地を所有して家を建てるという余裕がなかった時代です。借りるにあたっても口頭で契約書などない場合も多く、家を建ててからかなりの年数が経過して契約を結び、借地権相当額の金員の授受もない場合が殆どのようです。 現在は家を建てるために土地を借りる場合、借りる側に借地権があり、土地の所有者は底地権を持っています。地代をきちっと払っていれば借地権は認められます。場所によって権利の割合が決められており、住宅地の場合は借り手が6割、貸し手が4割を持つことが多いようです。話し合いで権利を買い取ることもできます。借地権は土地所有者の同意がなければ登記できないので銀行の担保には供せません。居住用の土地は財産として大きなものなので底地権を土地所有者から譲り受け完全な所有権を持つことをお勧めします。気をつけなければいけないのは借地人は底地権を買い取る権利はありません。あくまでも話し合いです。
日向建設
鎌倉市大船1―15―3
0467・47・5454
http://www.hyuuga.co.jp/


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第1回迢空賞受賞の吉野英雄氏色紙の前で大下さん=瑞泉寺

短歌の栄誉「迢空賞」受賞

瑞泉寺住職・大下一真さん

短歌界で最も権威ある「迢(ちょう)空(くう)賞」に、鎌倉・瑞泉寺住職・大下一真さん(73)の歌集『漆(しっ)桶(つう)』(現代短歌社刊)が選ばれた。角川文化振興財団の主催で、今年で56回目。前年1月から12月に刊行された歌集の中で最も優れたものに与えられる。4月21日に発表があり、「僕なんかがもらっていいのか」と大下さん。 歌は家庭の中で身近にあって、高校生ぐらいから親しんできた。「自分の思いを述べるのにちょうどいい器」という。 タイトルの「漆桶」は、愚かな坊さん、わけがわからないやつという意味。大下さんの第七歌集で、2013年から20 18年の間の作品5百余首を収めた。朝のお勤めを終えて、剪定鋏を持って庭に出て四季の移ろいを感じながら庭掃除をする生活の中で、この時期は本山・円覚寺に出仕し大きなお役目を果たしたり、養母を見送ったり、息子を専門道場に出したりと多忙な時期だった。「でも緊張感が大切」と振り返り、「作品はどれも我が子のようで、できのいいのも悪いのも同様にいとおしい」と話す。 現在、歌誌「まひる野」編集発行人、鎌倉歌壇会長、鎌倉同人会副理事長などを兼任。


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鎌倉彫の御朱印展

鎌倉彫の御朱印制作

はんこ文化の魅力発信

鎌倉市御成の印章店「鎌倉はんこ」の代表・月野允(みつ)裕(ひろ)さん(42)が、鎌倉彫の職人らとの共同で、鎌倉彫の御朱印を制作している。 古都鎌倉に相応しい御朱印を考案し、鎌倉彫や御朱印文化の魅力を発信しようと4年前から構想を練り、新たなチャレンジを支援する「鎌倉市商工業元気アップ事業」の認定を受け、鶴岡八幡宮と、鎌倉十三仏の寺などの計43個の御朱印を制作した。 素材は「鎌倉市の木」であるヤマザクラやツゲで、鎌倉彫職人たちが寺ごとにアジサイや竹、ウメなどのデザインを施して漆を塗り、月野さんが印面を彫刻し、印影を忠実に再現した。 奉納する前に、市民に見てもらおうと2月と3月に行った展示会に副市長や関係者の他、延べ約550人が来場し、好評だった。早ければ6月に奉納するという。


鎌倉朝日新聞社

プールにアート作品

海のほとり美術館
6月5日まで逗子

相模湾を望む逗子の小坪飯島公園プールがアート空間に生まれ変わる「海のほとり美術館」が6月5日まで開かれている=写真。 大型インスタレーション(空間アート)は、行政、学校、漁師、地元企業、市民団体、延べ3千人以上の市民の力が結晶する作品で、プールの上をボートに乗りながら鑑賞もできる。 作品制作の中心となったのは国内外での実績を持つ市内在住のアーティスト松澤有子さん(46)。子育てをしながら各地を回る生活から故郷の逗子に戻り、2017年の逗子アートフェスティバル参加をきっかけに翌年から地元との関わりを深めながら市民と制作を進めてきた。プールの中に浮かぶ全長8mの舟のオブジェは、市立小学校の児童らが集めたペットボトルのキャップやボランティアが海岸で拾った漂着プラスチックを熱して紡いだ糸で編み上げたもの。各自が糸を自宅に持ち帰り、らせん状に編むという分散型の手法に幅広い年齢層が参加した。
平日11~16時、土日曜10~16時半。観覧料5百円、中学生以下無料。 (K)


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世界の国旗をボートに

小学生50人参加

「ボートに国旗を描いて世界の国々と海でつながろう!」をテーマに「世界に一つだけのボートづくり」が葉山町の一色海岸でGW中行われ、6日間で約50人の子どもたちが参加した=写真。 今年30周年の葉山芸術祭の催しで、参加は3回目。御用邸前交差点近くの飲食店「一色BASE」が主催し、食を通して子育て世代の支援を行う「はやま食卓プロジェクト」が協力している。 子どもたちは国旗カードを使ったクイズで各国の情報を学び、お気に入りの国旗の下絵を練習したあと海岸に移動。同店所有の白い手漕ぎボートに絵具で国旗を描いた。 「配色がファミリーマートの看板に似ている」とシエラレオネの国旗を選んだ子や「月と星がかっこいい」とアルジェリアの旗に興味を持った子、青い空と黄色の麦畑を象徴するウクライナの国旗を描く子がいた。乗船体験後、特製弁当を輪になって食べる楽しみも。 同店と一色BOATのオーナー齋藤淳太さん(56)は「この子たちが親になって自分の子に『これは私が小さい頃に描いた絵だよ』と言えるよう続けていきたい」と31艘のボートに子どもたちの夢を託した。 (K)


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スケッチ日和(55)

「鉄路残影」 黒川 明

深沢の車両基地と大船駅をつなぐ線路がここに敷かれていた。今残っているレールはここだけで、車両基地跡地も開発が進んでいる。 使われなくなってどれほど立ったのだろう。たくましい野草がのびのびと勢力争いをした結果、枕木も砂利もすっかり覆い隠された。線路が露出するわずかな部分はその下が小川となっている。 子どものころ、よく線路を歩いた。電車が通った後は血に似た臭いがした。鉄のにおいも、ここでは薄れていくようだ。
水彩画 36×51cm



優秀選手・功労者を表彰

鎌倉市体協

鎌倉市体育協会(加藤清和会長・30団体)は各団体が推薦する功労者5人、令和3年度に活躍した優秀選手13人、優秀団体3を5月20日鎌倉芸術館で表彰した。カッコ内は推薦団体。
【体育功労賞】渋沢直美(水泳)栗原妙子(弓道)赤羽根亮子(スキー)深澤隆史(サッカー)仁平裕子(太極拳)
【優秀選手賞】伊藤槙紀 (卓球) 田島圭介・熊谷知子・野井貴史・美濃部公貴・山極澄夏・野井瑞稀・菅心寧・井上航(以上水泳)今井亜由奈(陸上競技)前田忠昭・松岡隼(以上テニス)林田優希(スキー)(敬称略)
【優秀団体賞】三菱電機鎌倉製作所テニス日本リーグチーム、鎌倉宮カントリーテニスクラブ、鎌倉四十雀(サッカー)
水彩画 36×51cm



鎌倉年中行事

6月

▼葛原岡神社例大祭 3日11時神前祭・墓前祭、関係者のみ。4・5日由比ガ浜へ神輿渡御中止。
▼蛍放生祭 11日 19時、祭典のみ、鶴岡八幡宮。
▼五所神社例祭 12日例大祭10時、関係者のみ。10時半、神輿くぐり(材木座の子対象)。11時。神輿渡御。肖宮祭、見目明神祭、海上渡御、神楽中止。
▼瑞賢忌 16日10時、建長寺。江戸初期の豪商で治水工事や航路開発の功労者河村瑞賢の法要。
▼大祓式・古神札焼納 30日、鶴岡八幡宮。


プロムナード

私の仕事場は10年ほど前に銀座から鎌倉に移転しました▼自分自身は鎌倉で育ったので、「地元に職場」という感覚でしたが、働いてみると知らないことが多かったです▼移転当初は「商店会に属する」など、都内では経験しなかったことの連続でした。一番印象的なのは「托鉢」でしたが、商店会の人に優しく教えてもらえて対応もできました▼都内では同じビルでも、エレベーターに乗り合わせた人が「どこの誰なのか」が全くわからなかった状況から一転▼鎌倉では道を歩いているだけで、声を掛けてもらえる「お互いの顔が見える社会」で心地良いです▼リモートワークで地方への移住が流行していますが、人間関係を構築する場の必要性を感じています。(N)


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