鎌倉朝日新聞 (11月1日号 2021年 第512号)

鎌倉朝日新聞社

みなとみらいキャンパス貴賓室に作品を飾りつけた木内さん親子

鎌倉朝日新聞社

鎌倉彫の作品を制作中の木内さん

神奈川大学新キャンパスに鎌倉彫の大作

校章丸額を老舗鎌倉彫店が制作

横浜市みなとみらい地区に今年4月誕生した神奈川大学の新キャンパスの竣工記念に鎌倉彫の「校章丸額」の制作が行われ、新キャンパス最上階の貴賓室に飾られた。 作品は、直径60㌢、厚さ4・5㌢の丸額で、神奈川大の校章の菊模様をバックに水が彫られていて、一番手前に黒塗りの校章が浮き彫りにされている。 みなとみらいキャンパスは地上21階、地下1階建てのタワーキャンパスで、国際日本学部など3学部、約5000人が学ぶ。貴賓室は海外などからの要人の接遇などに使われる部屋で、建物の竣工に先立ち、その部屋に飾る神奈川らしさ、横浜らしさのある工芸品がないかと昨年の夏ごろから大学側が探し始めた。帆船、寄木細工などあれこれ候補が上がり、鎌倉彫もその一つだった。 神奈川大学みなとみらい統括部長・勝又章好さんが、友人の紹介で鎌倉・小町通りの鎌倉彫店「一翆堂」を訪れ、要望を伝えると、同店の木内小夜子さん(74)が真摯に耳を傾け、「大きな作品になるので、とにかく木地を手配しなければ」とすぐに仕入先に発注をかけてくれた。「木内さんの熱意に心打たれた」と、昨年10月下旬に鎌倉彫の発注が決まった。 「大学の校章を入れたい」という意向を聞き、木内さんは地球をイメージした円形の額の真ん中に校章を置き、まわりに水をイメージした曲線を描いた3通りのデザインを11月に提案した。 デザインが決まると、木内さんは暮れに届いた北海道産のカツラの木地に下絵を描き、木地職人に透かしの加工に出した。そして1月中旬、木地が戻るとそれからが彫り。4月の納期に間に合うようにと、娘の史子さん(44)と共同作業でひたすら彫りつづけた。「コロナ禍で、お客さんも店に来られない時期だったのでじっくり取り組めた」と話す。 3月初旬に彫り上がった作品を塗師に塗りを依頼し、1カ月ほどで完成した。干口塗(ひくちぬり)の文様の中から黒色の校章がくっきり浮き出している。 「携わった職人たちからやりがいのある仕事ができて感謝しているといわれた。自分自身、前向きにすごすことができた」と晴れ晴れと語った。 この時期で、大々的なお披露目会のようなものはできなかったというが、作品は木内さん親子が無事、納品した。大学側は「素晴らしい作品ができてほんとうによかった」と話している。


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バリアフリー推進やまちづくり

神奈川大学と鎌倉市が協定締結

地域資源をかした持続可能なまちづくりに向けて、鎌倉市と神奈川大学(兼子良夫学長)は、9月29日鎌倉市役所で「鎌倉市と神奈川大学との包括連携協定」を締結した。 協定の概要は、教育・研究活動に関する支援・協力、バリアフリー推進の取り組み、双方の施設や対話の場などの運営協力、大学・学生による鎌倉の魅力発信など。 今回の協定は、社会のバリアフリー化を政策の柱にしている鎌倉市会議員の千一さんが母校の神奈川大学と鎌倉市との仲介役となって実現した。 兼子学長は「これからの学びはキャンパスだけでなく、社会とつながったものでなければならない。地域の課題と取り組んでいきたい」と意気込みを語った。


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鎌倉みほとけ紀行(115)

円応寺・倶生神

冥界(めいかい)シリーズ(勝手に命名)第2話は円応寺さまの冥府(めいふ)彫刻、俱生(ぐしょう)神(じん)坐像を紹介します。 冥界とはあの世のことです。人は死んだらどうなるのか、幼い頃お寺の本堂の天井を見上げながら思っていた記憶があります。世間への意識も少ない頃の記憶なのですからやはり死が切実な問いであったのかもしれません。 俱生神さま(ちょっとコワイので「さま」を付けます)は人が生まれたときから常に左右の肩につきまとって人の善悪の所行を記憶し、死後、閻魔さまにそれを奏上するといわれます。また冥府の書記官ともいわれ、道服をまとい、巻子(かんす)(欠損/たぶんその人の生涯記録簿でしょうか)を手に掴んでいます。両像は閻魔大王の脇侍で、お一人は口を固く結び瞋恚(しんに)(怒り恨みの煩悩)の表情。もう一人は口を開け、こころなし笑みを浮かべているかの表情は微妙です。そんな像を拝していますと人として正しく生きねばと思います。しかし、どうせなら極楽浄土を夢見たいとと思いますが、なぜか地獄に興味が沸きませんか。 鎌倉時代、地獄や極楽往生といった人々の関心事を当時の仏師や絵師は他界観念や冥界の様相を多彩にイメージしたのです。それらを目の当たりにした人々はさぞ真剣に拝んだことでしょう。露ほどの命の儚さを時に思い知り、悲しみを慈しみへと転化させる智慧も学び人は成長しました。真に逞しいものです。 「人は騙せても自分は騙せないぞ、肩の力を抜いて素直にしっかり生きよ」と、肩の上に俱生神さまがそっと見守っておられるような気がしました。
各寄木造。玉眼。彩色(剥落)。像高(開口像)99・5cm閉口像100・8cm。鎌倉時代。
国重文。鎌倉国宝館で展示中。



鎌倉朝日11月1日号配達日変更のお知らせ

衆議院選挙の投開票が10月31日に行われるため、11月1日付新聞は原則、折り込み広告なしでの配達となります。そのため、鎌倉朝日11月1日号は10月31日に配達させていただきます。


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「ひと」
神大(じんだい)の校章を鎌倉彫で制作した

木内小夜子(きうちさよこ)さん

今年4月開校した神奈川大みなとみらいキャンパスに飾る鎌倉彫の校章を制作した。小町通りに店を構える鎌倉彫の店「一翆堂」の2代目。直径60センチの校章が最上階21階にある貴賓室の壁に掛けられると「重厚な部屋になった」「頼んでよかった」との称賛の声が上がった。その一瞬をうれしそうに語る。 制作は娘さんの友人を通じで持ち込まれた。絵画でなく、神奈川県を代表する工芸品の鎌倉彫で作れないかとの要望だった。趣旨を聞き、すぐに「四角より丸の方が落ち着くだろう」と思った。丸を地球に見立て、校章の周りの余白に水を描いた。直径60㌢は木地として手に入る最大の大きさだったという。 「大きな注文をいただけて制作できるなんてなかなかできないので楽しかった」という。彫り進めていく途中で、腰や首を痛めたりもしたが、完成した時の喜びはその痛みを忘れるほどだった、と振り返る。 一翆堂は1955年、父翆岳氏が設立。家業を手伝ううちに自然に鎌倉彫の世界に進んだ。2008年2月に父が死去、それに伴い店を継いだ。 製品(作品)は母娘2人が制作している。娘の史子さんは3代目。気心が知れ、息の合った娘と互いに刺激し合い、アドバイスもし合い、それぞれの作品を作る。女性の目線で実用性を考えながらデザイン・図柄を決めるのが特徴。それが作品のオリジナル性につながっている。店内で鎌倉彫の教室を開いている。 木地屋でもある。店に入ると両壁に鎌倉彫の材料となる木地が天井からぎっしりと並ぶ。「木地の壁」だ。ほとんどのタイプがそろっており、鎌倉彫を趣味とする人々が木地を求めてやって来る。 鎌倉彫はカルチャーセンターで人気の工芸教室だが、コロナ禍で教室がなくなったりして木地の売れ行きは減ってきた。来年は店を改修して、作品をもっと展示し「こういう茶托にこの茶わんが合う、このお皿にこのお菓子はどうでしょう」など積極的に提案し、ファンを増やしたいと語る。 趣味はゴルフ、ピラティス。彫るという仕事柄、スポーツ系は気分転換にいいからだ。表具づくりも手がける。
座右の銘は「感謝の循環」。
3年後、77歳になったとき作品展の開催を考えている。
(文・写真 三浦準司)


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カヌーで大海原へ

いざっ!!鎌倉てらこや(79)

コロナ禍の子どもたち
鎌倉てらこや事務局 小木曽 駿

緊急事態宣言が9月末に全面解除され、鎌倉てらこやでも子どもたちと直接関わる対面での活動を再開した。10月3日日曜に、材木座海岸でアウトリガーカヌーを体験する「海L♡VE」かまくら」を実施した。 10月にも関わらず、日差しの照り付ける、海での活動としてはもってこいの天気だった。久しぶりの活動で子どもたちも楽しみにしていたのか、みな総じてハイテンションだったが、お兄ちゃんの付き添いでお母さんと一緒に遊びに来ていた未就学児の弟くんは、自分は申し込みをしていないのでカヌーに乗れないとご機嫌斜め。しかし、たまたま一人キャンセルがあり、「乗ってみる?」と聞くと、即座に「乗るっ!」と答えた。あのらんらんとした目の輝きが忘れられない。自分の背丈よりも大きなオールを担いで、お兄ちゃんと同じカヌーに乗り込み、海へと漕ぎ出していった。定員は例年の半分だったが、それでも多くの子どもたちや大学生スタッフが集い、海を本気で遊びつくし、まさに「てらこや」らしい、久々の1日となった。 コロナ禍で子どもたちの育ちや学びに、今後、どのような影響が出てくるのかは未知数だ。子どもたちの多くは、withコロナの社会へ大人以上にたくましく順応しているようにもみえる。しかし、時に怖さを感じたり、不安感にさいなまれたりするかもしれない。 緊急事態宣言中は、外遊びをしようにも一緒に遊ぶ友達が少なくなり、家にいることが多いと兄弟げんかも増えて困ったという話や、学校の給食時間におしゃべりをしている子がいて、感染が広がるのではないかと娘が怖がっているという話を聞いたこともあった。 文部科学省によれば、昨年度の不登校の子どもたちは、過去最多の19万6千人に上ったという。「不登校やひきこもりの未然予防」を目的として活動を行ってきた「鎌倉てらこや」として、これまで以上に子どもたちの「今」と向き合い、一人ひとりに寄り添いながら活動していきたい。

鎌倉てらこや事務局
0467-84-9746(平日13~17時)
http://kamakura-terakoya.net/



購入新図書のリスト抄

鎌倉市中央図書館(9月分)

鎌倉市中央図書館(25・2611)は9月に一般126冊、児童書29冊を収蔵した。一般的なものは下記の通り。 ▼「子どもの脳と心がぐんぐん育つ絵本の読み方選び方」仲宗根敦子著 篠浦伸禎監修 パイインターナショナル▼「あたりまえなことばかり」池田晶子著 トランスビュー▼「とても傷つきやすい人が無神経な人に悩まされずに生きる方法」みさきじゅり著 ダイヤモンド社▼「『やめる』という選択」澤円著 日経BP▼「分裂と統合で読む日本中世史」谷口雄太著 山川出版社▼50代から自分を生かす頭のいい副業術-一生食いっぱぐれない」中山マコト著 青春出版社(青春新書INTELLIGENCE)▼「定年後からのお金と暮らし-2021」朝日新聞出版(週刊朝日MOOK)▼「コロナ貧困-絶望的格差社会の襲来」藤田孝典著 毎日新聞出版▼「海獣学者、クジラを解剖する。-海の哺乳類の死体が教えてくれること」田島木綿子著 山と渓谷社▼「認知症はよくなりますョ-患者と家族のこころを支える治療とケア」稲葉泉著 本の泉社▼「さいごはおうちで-在宅医たんぽぽ先生物語ねこマンガ」永井康徳著 ミ¬ーズワーク(ねこまき)マンガ 主婦の友社▼「日本全国ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話-もう、ありがとうしかない」滝沢秀一著 主婦の友社▼「明治の寄席芸人-六代目圓生コレクション」三遊亭圓生著 岩波書店(岩波現代文庫)▼「知的文章術入門」黒木登志夫著 岩波書店(岩波新書)


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新刊 『まじさかさじま』

絵と文 伊藤 文人

さかさにすると別の絵が見える大人も子どもも楽しめるさかさ絵本「まさかさかさま」で定評のある伊藤文人さんが、新刊『まじさかさじま』を刊行した=写真。海や島のある絵の中のイルカがさかさにするとヒツジになったり、テントの中のカバが恐竜になったり…。 見開きのページいっぱいに色鮮やかな絵が描かれていて、「ゆうひがあかい おかのうえ ウサギとネズミが あつまって  ゆらゆらおどる フラダンス」とリズムのよい七五調の文が添えられている。さて、ウサギとネズミは何に変身するのか…。 わかりやすい文がひらがなで書かれているので子どもから大人まで楽しめて、さかさの絵が何かを認識するのに思考力がいるのでボケ防止にも。 伊藤さんは、2002年全国トリックアートコンペグランプリ、199 9年M.C.エッシャー生誕100年「超感覚ミュージアム」金賞など受賞多数。みらいパブリッシング刊、1485円。
◆読者プレゼント 著者のご好意で3名様に。往復ハガキに住所、氏名、年齢、鎌倉朝日の感想を書いて1面題字下住所の鎌倉朝日へ。11月10日必着。多数抽選。

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「秋の古我邸」栁沼知恵子

み る

▼川喜多映画記念館
企画展「田中絹代―女優として、監督として」12月12日まで。田中絹代の足跡を資料とともに紹介。一般4百円、小中学生2百円。▽関連上映「おとうと」「楢山節考」「恋文」など。一般千円、小中学生5百円。 ▽特別上映「乳房よ永遠なれ」の上映とトーク「田中絹代の監督術」27日13時半。1600円、小中学生8百円。
23・2500
▼「鶴岡八幡宮の名刀」展
12月5日まで鎌倉文華館鶴岡ミュージアム。鶴岡八幡宮に伝わる鎌倉殿ゆかりの名刀を半世紀ぶりに公開。国宝6、重文12など65点。1300円。
55・9030
▼「間島弟彦と黎明期の鎌倉国宝館」展
12月5日まで鎌倉国宝館。鎌倉国宝館や図書館などの建設費を寄付した間島弟彦の史料や開館当時の出陳など。4百円。
22・0753
▼「頼朝以前~源頼朝はなぜ鎌倉を選んだか」展
12月18日まで鎌倉歴史文化交流館。市内の原始・古代の出土品や歴史資料から鎌倉時代以前の鎌倉の歴史を辿る。3百円。
73・8501
▼栁沼教室鎌倉スケッチ会展
11月9~14日鎌倉生涯学習センター。油彩・水彩約50点。無料。
赤井方 45・0437


き く

▼大場俊一モーツァルトピアノリサイタル
11月14日14時、藤沢リタホール。湘南モーツァルト愛好会例会。ピアノソナタハ長調K309など。4500円、学生3千円。
046・872・1963
▼Tango Nuevo 11月28日14時、鎌倉生涯学習センター。タンゴ界の革命児ピアソラ生誕百年記念コンサート。村田望さん(歌)、鈴木崇朗さん(バンドネオン)らの「リベルタンゴ」など。4千円、小中学生2千円。
スタジオエスポア―ル 090・2207・0031


まなぶ

▼なぜ今、プラスチックごみ対策?
11月5日10時。逗子市役所5階会議室。東洋大学経済学部・鈴木孝弘教授が現状と解決のヒントを話す。無料。要申込。
逗子市社会教育課 046・873・1111
▼地球環境と省エネ~上手な電気の使い方
11月10日15時、鎌倉の笛田リサイクルセンター。パナソニック職員の出前講座。無料。要申込
鎌倉リサイクル推進会議 32・9094


さんか

▼逗子アートフェスティバル
1期~11月14日、2期12月3~5日。ぼくうたワークショップ11月6・7日ほか11~16時、小坪飯島公園プール。みんなでアート10~14日10~17時、逗子文化プラザ。オブジェットプラレール3日、池田通り明治安田生命駐車場、13・14日市民交流センターフェスティバルパーク。
10~16時。その他イベント多数。
実行委(逗子市文化スポーツ課) 046・873・1111
▼第26回かまくら国際交流フェスティバル 11月7日10~14時、高徳院(鎌倉大仏)。鎌倉を中心に国際交流・協力をしている団体の活動紹介やバザー他。実行委員会(鎌倉市文化課内)
61・3872
▼鎌倉ユネスコ協会
▽バザー 11月14日10~14時。同会深沢倉庫(深沢中学へ上る手前の信号右折の長屋)。毎月第2日曜。※献品受付 衣類・着物・雑貨・支援用食糧品。
久保方 44・9830
▽書きそんじハガキでアジア寺子屋支援 未使用切手・プリペイドカードなど。鎌倉市御成町11―40Mビル3F。
080・6602・9498
▼ふらっとカフェ鎌倉
食を通じて多世代交流。11月19日17時半、二階堂デイサービスセンター。弁当テイクアウト、食育講座、国際交流、地域有志の音楽演奏。子ども2百円、大人5百円。
24日ソンベカフェ。店内飲食16時・17時。子ども2百円、大人5百円。テイクアウト16~18時、5百円。
メールで予約flatcafekamakura@gmail.com
▼北鎌倉・台峯の緑をともに
▽山の手入れ11月20日10時、山ノ内配水池横。
▽山歩き21日9時、山ノ内公会堂。
北鎌倉の景観を後世に伝える基金・望月方 45・7420
▼逗子の市(雨天中止)
亀岡八幡宮境内。
▽フリーマーケット11月26日9~15時。雑貨・衣類・手造り品など約20店。

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麻文化と糸かけアート紹介

葉山在住の柳町てるこさん(67)が、北鎌倉古民家ミュージアムで鎌倉糸かけ工房の作品展を開いている。柳町さんの作品は「月の渚」という題で、94㌢四方の板にくぎを打ち、そこに円形に糸を張っている=写真。 工房で麻糸づくりと糸かけを学ぶ受講生10余人作品も紹介されている。柳町さんは「日本の麻の文化を知ってもらいたいし、糸かけをもっと普及させたい」と話している。 12月12日まで。入館料大人500円。
北鎌倉古民家ミュージアム 25・5641

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旧村上邸に息づく文化を継承

能舞台で観世流が稽古

観世流シテ方能楽師の浅見慈一さん(57)が昨年から西御門の旧村上邸で能の稽古を行っている。 所有者だった村上梅子氏から2016年に鎌倉市に遺贈された同邸は、明治末期に建てられた伝統的な和風木造住宅。約350㎡の母屋、2つの茶室のほか、村上家の所有となった1941年(昭和16)以降に母屋の一部を改造した能舞台の存在が特徴となっている。 一昨年から民間運営の「鎌倉みらいラボ」として文化活動や企業研修が行える交流の場へと生まれ変わった。 能稽古は毎月1回、1対1で約1時間。祖父と父、叔父が村上夫妻に能を教えていたという深い縁を持つ浅見さんは「庭の木々や鳥の声、四季の移ろいを感じるこの能舞台は特別。世界最古の舞台芸術のエネルギーを伝えたい」と、皆で伝統を受け継いでいく「動態保存」が能や同邸の持続可能性につながると話す。 投資型クラウドファンディングなど新しい手法で同邸の価値を発信する運営会社のグッドネイバーズはコロナ禍でも感染対策を取りながら見学を受け付けている。
080・2117・3217

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橘の家紋

季節の心(61)

香しき高貴な橘  佐伯 仁

●橘の気品 勲章に咲く
11月。霜月。秋深し。
皇居では文化勲章の親授式が行われる。名誉ある勲章は、常緑で五弁の清楚な橘のデザイン。 橘の歴史は古い。第11代垂仁天皇は田道間(たじま)守(もり)命(のみこと)へ不老長寿の霊果の探索・採取を命じた。 中国・東南アジアで10余年の歳月をかけ、遂に発見―「非時香果」(ときじくのかのこのみ)。 時を定めず常に香り高い橘を携え、意気揚々と帰国するが天皇はすでに崩御していた。 田道間守命は悲嘆にくれ、墓前で帰国の遅れを侘び、自ら命を絶つ。 家臣は死を惜しみ、帰国地の佐賀・伊万里の中嶋神社に祀った。後に彼の生誕地、兵庫・豊岡の中嶋神社(606年創)の主祭神となる。 現在、この神社の境内では、4月第3日曜日に「橘花祭」を開催。 全国の菓子業者が商売繁盛を菓子神・田道間守に祈り、子供たちも偲ぶ歌を唄う町挙げての祭。 古代では菓子は「果実」もさし「子」は帽子、扇子など小さいものを意味した。 一方、文化勲章の橘は科学・芸術など〝文化の悠久〟を讃え、1937年(昭和12)昭和天皇が選定、受章者の胸を飾っている。
実りたる右近橘
 御簾の前  松野自得


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当会の食料支援活動

もらう幸せからできる幸せ、あげる幸せに!
ミャンマー ファミリークリニックと菜園の会(40)

  代表理事 名知仁子

ミャンマーの僻地、無医村の農村部の住民たちが自分たちの健康を守り、自立(自律)できる生活を目指して当会は①Sustainable Life Project「持続可能なコミュニティ構築計画」②Food Supply Projects「食料支援計画」を11月から開始する。 2月1日にクーデターが起り、それからここミャンマーの日常は激変した。日給140円の農村部の住民の生活も一変してから8カ月が過ぎた。Stay(ステイ) Home(ホーム) のために農地に行けず、農業が出来なくなり、収入の道が途絶えた。近隣の村4、5カ所から薪や竹を買いに来るバイヤーが来なくなった。手元に現金がないからだ。 どうやって生活を立てればいいのだろうか。ガソリンは高騰し以前の3分の1しか手に入れられない。油も卵も高くなり、野菜は手に入らなくなった。2015年から活動している当会が巡回している村でも様々なことが起こっている。村の野菜栽培の畑からキュウリが盗まれる。1本3・5円のキュウリも買えないようになってしまった。 このような現実を目の当たりにして、我々が立ち上げたプロジェクトの①「持続可能なコミュニティ構築計画 (有機野菜栽培を通じて)」は、以前から行っているコミュニティベースの有機野菜栽培計画の村をさらに3つ拡大すること。 ミッタ―ファンデーションというミャンマーのNGOと連携してこれを行う予定だ。さらに、この団体の担当者と協議し、すでに活動している村も訪問させていただいた。彼らとのこれからの連携にワクワクしている。 ②「食料支援計画」は、今まで魚の釣り方は教えても魚自体を提供したことはなかった。それは一時しのぎにしかならないことを経験しているからだ。しかし、今回だけは例外だ。みんな食べ物が買えない、食べられない。村の中で盗みが始まった。当会の事務所の前の池でも大人も子どもも魚を捕まえ耐えしのごうと必死である。 そのため、巡回している12村のうち特に生活が成り立たない3つの村を選定し、村の全世帯に3回ずつ食料を配布する予定。食料は主食の米、油、豆、乾燥魚と栄養バランスも考慮している。この構想は7月頃からあったが国軍がどう動くかわからず、延期されていた。今後も政情を見極めながら実施していきたい。 皆さんの応援を心に当会のミャウミャ現地メンバーは前に進みます! ご支援をよろしくお願いします。
事務局 東京荒川区東尾久8―41―23
FAX 03・6807・7499
myanmarfcg.info@gmail.com
http://mfcg.or.jp/
https://www.facebook.com/mfcg.or.jp

【この記事は清興建設提供】


専門家とSDGsを学習

鎌倉の小中学生ふるさと納税活用で

子どもも教師もワクワクするような教育活動を、企業・大学・NPOなどと協働で実現したいという思いから鎌倉市が昨年立ち上げた「鎌倉スクールコラボファンド」を活用した教育活動が、今年度から鎌倉の市立小中学校2校で開始されている。 これまでSDGs(持続可能な開発目標)をテーマとした総合学習を実施してきた小坂小学校と玉縄中学校で、これまでの学びをさらに深めて質の高い学習を実現するため、それぞれNPO「未来をつかむスタディーズ」と・慶應義塾大学SFC研究所の協力で、6月から「SDGsをテーマとした課題解決型学習を始めている。 小坂小学校では10月12日は「プラスチックごみ」「エネルギー」「動物保護と地球温暖化」「鎌倉のごみ減量」「難民問題」など子どもたちがあげた8つのテーマでグループに分かれ、それぞれの「テーマで活動している実践者や研究者を招いて話を聞き、意見を出した。 世界各国のごみの量を聞き、「こんなに多いとは思わなかった」と驚き、ミニソーラーの組み立てではペンチで導線を切ったり端子をつないだり、ベトナム難民の女性からの話に自分があたりまえのように学校にきていることのありがたさに涙したり、2限(45分×2)の学習の中で子どもたちは様々なことを学んだ。 学習の視察をしていた岩岡寛人教育長は「子どもたちの多様な関心に一人の先生が対処するのは難しいが、専門性のある講師からリアルな話を聞ける授業は魅力があると思う」と話していた。 市では鎌倉スクールコラボファンドの2回目の基金を、ふるさと納税を使って募っている。目標金額は750万円で、募集期間は12月末日まで。申し込みは「鎌倉スクールコラボファンド」。
問い合わせは市共生共創部企画課ふるさと寄付金担当
0467・61・3845


鎌倉朝日新聞社

園児にクラシックの名曲を

ピアニスト若林顕さん

ピアニスト若林顕さん(56)が、葉山町堀内の明照幼稚園(杉田雅美園長)を訪れ、園児ら約180人にピアノの名曲を披露した=写真。 ベートーベンの「エリーゼのために」など解説をはさみながら、10曲を演奏し、ショパンの「革命のエチュード」など間近で聴く迫力のある音にはじめは戸惑う年少組の子もいたが、「ムーンリバー」などの優しい曲に聴き入り、「山の音楽家」では演奏にあわせて身振り手振りを加えながら合唱を楽しんだ。年長組の園児たちはピアノを取り囲み、鍵盤の上を巧みに動く若林さんの指を見つめながら演奏に聴き入った。 「きれいな音だね。若林さんの手はどんな手なんだろう」など、東京芸術大学の学友の縁で若林さんを招いた杉田園長は、演奏の間に言葉をはさみながら、園児たちの関心をピアノに引き込んだ。 演奏後、若林さんは「自由におしゃべりしながらでも聴いてもらえればと思った。何が心に残るかわからないので。今日はとてもいい雰囲気だった。こういう機会は素晴らしいと思う」と語った。 ピアノを始める前からオルガンはやっていて7歳のときピアノを弾き始めたという若林さん。22歳でエリザベート王妃国際コンクール第2位など数々の入賞を果たし、現在国内外の第一線で演奏活動をしているが、機会があれば積極的に公共施設でのプレ演奏などアウトリーチ的な活動もしているという。


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葉山アマモ協議会提供

藻場の再生めざし海藻を移植

葉山アマモ協議会

葉山アマモ協議会が、沖合で消失してしまった海藻のカジメを移植で再生させる藻場保全活動を9月11日、芝崎海岸周辺で行った=写真。 同会は町内の漁業者やダイバー、学校関係者、企業や研究者らが連携し、約20年、協働事業を継続している。 岩礁の多い葉山の海ではダイバーの協力が必須で、中心となっているのはダイビングショップNANA(堀内)に集まるメンバー。約20人が2艘の船で漁師とともに出航。 芝崎沖の水深約10mの海底に自生するカジメから胞子を含んだ葉片を切り取り木綿の網袋に入れて回収した後、海藻が枯渇している名島沖のエリアへ移動。海底の岩場に十字型に設置された長さ15mのロープに網袋を縛りつけて固定した。「スポアバッグ法」と呼ばれるこの移植方法は3年前も行い効果が確認されているが、今回はより光を透過する綿素材に袋の材質を変更した。 参加者は「移植した種が育つ半年後にまた潜ってみたい」と水中撮影しながら作業を楽しんだ。 ダイビングガイドの永橋麗(れい)良(ら)さん(28)は「昔は足に絡むほどあった海藻が今はまばらになってしまった」と嘆きつつ、動画サイト「ぱーこ先生と学ぶ相模湾」で海の魅力や同会の取り組みを発信している。 台風の大型化、水温上昇、藻食性の魚やウニの増加などさまざまな要因が重なる磯やけは漁業衰退を招く恐れも。同会は町内の小学校への出前授業も行い、今後も町ぐるみで藻場の保全活動を進めていく。  (K)


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松尾宣方さん

松尾宣方さんを悼む

鎌倉考古学研究所理事長 河野眞知郎

特定非営利活動法人鎌倉考古学研究所の初代理事長であった松尾宣方氏〈76〉は、本年9月26日永眠された。 氏は、長く鎌倉市教育委員会に勤務されたが、1971年(昭和46)に文化財係が置かれたとき、初の考古学専門学芸員採用だったと聞く。着任後東正院遺跡を手始めに、東勝寺跡、鶴岡八幡宮境内、永福寺跡、御成小学校内遺跡など、今日では全国的に知られる遺跡調査を主導されてきた。 2004年(平成16)に市役所を定年退職された後は、任意団体であった鎌倉考古学研究所を特定非営利活動法人へと整備し、初代理事長となった。毎年夏に市教委との共催で「鎌倉市遺跡調査研究会」を開催し、埋蔵文化財の市民への普及に尽力された。また研究所の機関紙『かまくら考古』の刊行や、考古学と歴史学を横断するシンポジウムなども主導されてきた。ここ数年体調を崩され理事長職を辞されたが、後進の活動を気にかけていたと聞く。 筆者は、1073年(昭和48)以降氏の下で調査に従事してきたが、鎌倉の町なかを歩くと「ああここでは松尾さんが…」と思わない所はない。


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スケッチ日和(49)

「秋韻」  黒川 明

滑川には絵になる橋がいくつか架かっている。東勝寺橋もその一つ。橋を川から描くのは難しい。橋は川を渡るためにある。目は川をたどり、橋を素通りして奥へ進む。そして行ったきり戻ってこないことが多い。目を橋に誘導するための装置が必要だ。ちょうど欄干から蔓植物がのぞいている。これを伸ばすことにした。 風が吹いた。色づく草木に加え、風やせせらぎの音にも秋を感じる一日だった。陽光が少し揺らいで、岩の色さえ秋なのだった。
水彩画 50号F



鎌倉年中行事

11月

▼宝物風入 5~7日円覚寺、建長寺。
▼国宝舎利殿特別公開 5~7日円覚寺。
▼丸山稲荷社火焚祭 8日14時、鶴岡八幡宮境内の丸山稲荷社。五穀豊穣、無病息災祈願。鎌倉神楽奉納。
▼写真供養感謝祭 13日10~12時、浄智寺。
▼七五三祈祷祭15日、女子7歳「帯解き」、男子5歳「袴着」、男女3歳「髪置き」息災と幸福祈願。
▼新嘗祭 23日10時、鶴岡八幡宮。収穫の感謝と国の弥栄を祈念。
▼時頼忌俳句大会 23日関係者のみ。建長寺。
▼一ツ火法要 27日17時半、遊行寺。17時開場。要事前予約。灯火を燈し仏法甦り念仏祈念。
▼湘南の宝石 23日~2月28日江ノ島サムエル・コッキング苑など。


プロムナード

日本では年間で28・5億枚の洋服が作られ、約14・ 8億枚は売れ残り、新品のまま破棄されているそうです▼日本人の人口が約1・2億人ですから、単純に計算をすると1年間に1人につき24枚の洋服が用意され、11~12枚が購入され、残りは捨てていることになります▼さらに再生するリサイクル率は17・5%に留まっているそうです▼繊維をリサイクルして洋服ほか「紙やエネルギーや建材に活用できるような仕組み」をスタートさせている知人から教わりました▼「食品ロス」が取り上げられるなか、他にも様々なロスが身近にあるのかもしれません▼古着の断捨離に失敗しても「環境に貢献している」と胸を張る秋でした。 (N)


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