鎌倉朝日新聞 (7月1日号 2021年 第508号)

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歌碑建立の発起人名簿

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稲村ガ崎にあった西田幾多郎の歌碑=鎌倉市提供

西田幾多郎の歌碑 復活を

鎌倉市が寄付の呼びかけ

鎌倉市は、鎌倉ゆかりの哲学者・西田幾多郎(1870〜1945年)の歌碑を鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区に設置するためのガバメントクラウドファンディングを実施し、寄付を募っている。 この歌碑は、国道134号線沿い、鎌倉・稲村ガ崎の海を臨む公園用地に設置されていたが、2019の台風19号の波で海側の歩道が崩落し、安全確保のため、移動して鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区で保管されている。 1928年、58歳で京都大学を定年退官した西田幾多郎は、1945年に死去するまで鎌倉で過ごし、鎌倉の海にまつわる短歌をいくつも残した。幾多郎の没後、その偉業を記念するために1951年、歌の一つを彫った歌碑が建立された。 歌碑は幅約1㍍、高さ2・5㍍ほどの大きさの御影石で、「七里濱 夕日漂ふ波の上に 伊豆の山々果し知らずも 寸心」と記されている。幾多郎は哲学者であるとともに、詩人でもあり、終生で200首ほどの短歌を残した。歌碑に刻まれた歌は1935年、幾多郎が65歳頃の作という。 歌碑を発案したのは、安成三郎で、鈴木大拙が歌を選び、朝比奈宗源の書、神奈川県立近代美術館旧鎌倉館を設計した建築家・坂倉準三のデザインで建立された。 鎌倉市中央図書館に、歌碑建立の発起人と賛助者の名前を記した資料が保存されている。 そこには、発起人として、和迅哲郎、川端康成、ら29人のほか、賛助者として小林秀雄や東山魁夷ら225人の著名な学者や文化人が名を連ねていていて目を見張る。この資料は安成三郎が保管していたもので、安成の没後、安成の甥から鎌倉市に委託されたという。 クラウドファンディングの目標金額は、400万円。募集期間は8月29日までの90日間。申し込みはポータルサイトか、電話、鎌倉市役所企画課ふるさと寄付金担当へ。
0467・61・3845


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鎌倉表駅商友会 商店街マップ作成

鎌倉表駅商友会(荒井國明会長・会員約100)が、5月に加盟店舗の位置と業種を示した商店街マップを作成し、加盟店や観光案内所などで配布している=写真は荒井会長。鎌倉市商店街活性化事業費補助金を活用し、8000部作成。 同商友会は、1948年4月に発足し、活動を開始。鎌倉駅東口周辺から二の鳥居にかけての商店や企業、金融機関、寺などで構成されている。この地域には、銀行や郵便局、農協連即売所、スーパー、小売店などがあり、住民の生活に密着した店舗が多い。荒井会長は「観光客にも地元の人たちにも、より地域のお店のことなどを知ってもらいつながりがもてたらうれしい」と話している。


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鎌倉みほとけ紀行(111)

明月院・上杉重房坐像

6月といえば鎌倉。明月院ブルーの紫陽花がひときわ爽やかに咲く明月院を散策してきました。木々を抜ける風、季節の花々に囲まれた明月院境内には楽しそうに歩く若者が目立ちます。お寺に若者が足を運んでいただけることはうれしい限りです。綺麗な着物や浴衣で彩ったお嬢様方に、思わず花よりも目がうばわれてしまいます(笑)。 続くコロナ禍に人々は限界、疲弊した心に少しでも鎌倉の自然や清々しい空気にふれたいのだと思いました。お寺は癒しの空間であり、こころのオアシスなのです。 さて今回のみほとけは、明月院所蔵の上杉(うえすぎ)重房(しげふさ)坐像です。像は現在、鎌倉国宝館に寄託収蔵されています。 上杉重房は鎌倉中期の武将で関東(かんとう)管領(かんれい)上杉氏の祖といわれます。1252年(建長4)宗(むね)尊(たか)親王(しんのう)が鎌倉幕府6代将軍として下向するのに従い鎌倉に移りました。やがて上杉氏は足利氏と密接な姻戚関係を結び、重房の孫娘(清子)は足利(あしかが)貞(さだ)氏(うじ)の妻となり、あの足利(あしかが)尊(たか)氏(うじ)、直(ただ)義(よし)を生みました。以後足利氏の外戚として重きをなし、末裔(まつえい)、上杉(うえすぎ)憲方(のりまさ)は明月院の開基となりました。 鎌倉後期の肖像彫刻の傑作といわれる像は烏帽子(えぼし)をかぶり、狩(かり)衣(ぎぬ)(貴族の日常着)と指貫(さしぬき)といわれる袴(はかま)姿で安座する姿は勇ましく武将でありながら、朝廷に仕える頃の都人として品格のある風貌を伝えています。 凛々しくも少しうつむき加減で温和に見えるお顔には、何某か心に憂いを感ずるような表情にも見えました。その曇りの空のようにもみえる重房の眼の先にある世はどんな時代であったのでしょう。
木造、彩色、玉眼。像高68・2㎝。鎌倉時代。


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森山神社本殿

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パワー最強の神明神社

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パワースポット地図

かまくらの不思議を歩こう(42)

森山神社のパワー地図  大貫昭彦

*古代を綴る一色 葉山のパワースポットめぐり第2回は一色地区です。葉山6カ村(堀内(ほりうち)・長柄(ながえ)・一色(いっしき)・上山口・下山口・木(き)古庭(こば))の一つで、ここには、古代に開かれたという社が二つもあります。東大寺の初代の別当良弁僧正が開いたと伝える森山神社と奇(くし)稲田(なだ)姫(ひめの)命(みこと)を祀る吾妻神社です。今回は森山神社で手一杯なので吾妻神社は次回に回します。
*自然と文化の町 一色は、西に源頼朝も遊んだ海岸が広がり、北に三ヶ岡、東に瀧の台などの丘陵が町を囲んでいます。そうした環境に葉山御用邸、しおさい博物館、県立近代美術館、山口蓬春記念館が点在しています。森山神社は、自然と歴史、新しい文化が調和した町にあります。
*古代が息づく社 三ヶ岡の麓に広がる境内は明るく、古社という重い雰囲気とは異なります。それだけに入口の説明板には驚きます。「…当社は奇稲田姫命を奉斎し、…今から1200余年前、天平勝宝(749~759)の頃、良弁僧正によって勧請された』
*世計神事 森山神社の二つの行事も驚くべきものです。世計(よはかり)神事(しんじ)と行合(ゆきあい)祭(まつり)です。 世計神事は、11月の大祭の折、水と麹を混ぜた『御酒水』を神殿に供え、翌年、水の減り具合を見て、作物の豊凶を占う行事です。結果は神殿の前に書かれています。令和3年の占いは『平年作 世計4合5勺 天候気象の変化に注意』です。
*行合祭 行合祭は33年に1回、逗子の小坪天王社の神輿が渡御し、森山神社の神輿と出会う祭りです。小坪天王社の祭神は須佐之男命、森山神社は后妃の奇稲田姫命です。境内に階段式桟敷が設けられているのはこの祭りのためです。 桟敷の下にある一色会館は前面の窓を外すと、座敷舞台に早変わりし、鶴岡八幡宮の伶人、巫女の舞が演じられます。夫婦神のめぐり逢いは、前回は1996年(平成8)でした。次回は2028年(令和10)の予定です。
*御迎えスポット それにしても境内の開放感は他の社ではあまり経験しないものです。しかし、参道を進むにつれて雰囲気が変わりました。霊感のある人たちが度々足を止めるのです。最初は長い石段の途中でした。「パワーが優しい、やわらかい」などと反応。誰かが、『御迎えスポット』と表現しました。皆さんの話からすると、パワーの優しさは女性の神様に原因があるようです。
*山から下りた社 パワースポットは次々に見つかりました。社殿後ろの2カ所はいい匂いがするようです。線香の香りという人もいました。 しかし社殿左手のスポットは、マイナスパワーらしく、「頭痛、腰痛、背中が痛い」などの声が聞こえます。大黒天社と浅間神社の間には、壊れた石祠や五輪塔が並んでいます。原因はこれかなと思ったのですが、大根師は「戦場か砦でもあった跡ではないか」と推測されました。確かに境内は小高い台地です。言い伝えによると、社は初め、三ヶ岡の山上にあったようです。山から降ろされたのは土地を浄化するためかもしれません。
*霊感が歴史を解く? 皆さんの祈りが通じたのか、やがてマイナスのパワーは消え、あちこちでプラスのスポットが見つかりました。本殿の右手、神明神社のスポットが最強のようです。 大根師は、「社殿はここに下ろされたのではないか」と言われます。事実なら、霊感が土地の歴史を明かすことになる。面白い話です。


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みんなのけんちく学校の参加者たち=5月、宝庵で

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茶室を実測する子どもたち

子どもたちが家づくりを体験

測量、製図、組み立てまで

古民家や森林を訪れて、実測したり、木の伐採 作業を見学したりして、設計図や模型を作り、木材を伐って〝おうち〟を組み立てる、子どもを対象にしたプログラムが5月から開始された。 子どもたちに森の大切さやモノづくりの技を学んでもらおうと、鎌倉みんなのけんちく学校「木和堂」(鈴木直子代表)が12月までの7回シリーズで行う体験学習。自分たちで書いた設計図をもとに実際に木で〝小さなおうち〟を組み立てる。釘を使わない工法なので、何度も再生可能で、次回以降の学習にも活用できるという。10月に丹沢の森林で、伐採作業の見学もある。 今回は、鎌倉市内の小学3年生から高校1年生まで12人が参加。 1回目の5月22日は、北鎌倉にある「宝庵」の茶室を子どもたちが実測し、平面図を書いた=写真。建築士・日影良孝さんから実測の仕方や注意点の説明を受けると、4グループに分かれて、茶室へ。「こんなところから入るの」と躙り口を初めて体験して驚く子もいた。2㍍四方の茶室の壁を各グループが1面ずつ担当し、巻尺のゼロを持つ人、測る人、図面を書く人の役割分担で窓や柱、躙り口などの寸法をミリ単位で測ると、図面に「2カ所点を打って線でつなぐ」と指導を受け、図面に書き込んだ。 日影さんの丁寧な指導に、「楽しかった」と話す子どもたち。日影さんも「子どもたちの反応がさまざまでやりがいがあった」と話していた。


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鎌倉商議所が市に50万円寄付

エコバッグの販売収益

鎌倉商工会議所(久保田陽彦会頭)が6月7日、鎌倉市にエコバッグの販売収益50万円を寄付した=写真。 昨年7月からのプラスチック製買い物袋の有料化に伴い、同商議所が買い物客に役立ててもらおうとペットボトルの再生材を使用して作成し、市内で販売している。 久保田会頭は「市のSDGs活動に役立ててほしい」と松尾崇鎌倉市長に寄付金を贈呈した。松尾市長は「子どもたちのSDGsの教育に活用したい」と礼を述べた。 今後もバッグの販売は継続する。1個770円(税込)。同商議所、市観光協会、同商議所会員店などで販売。
問い合わせ鎌倉商工会議所 0467・23・2361


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神奈川県推進SDGsパートナー

鎌倉青果が登録

企業等におけるSDGs推進の裾野を広げることを目的に、神奈川県が2019年度から行っている「かながわ SDGs パートナー」(第5期)に5月に鎌倉青果が登録された=写真。登録者数は172で、第1期~第4期と合わせて504件。 登録されると、県の中小企業制度融資による支援を受けられ、その取り組み事例を県から発信、パートナー間のマッチング支援や中小企業者のSDGs経営に向けた取組支援、「かながわSDGsアクションファンド」 を通じた資金調達及びSDGsインパクトの「見える化」が受けられる。 鎌倉青果は1981年(昭和56年)設立。地域生産者の活性化と安心安全な野菜を販売するために「鎌倉いちばブランド」を立ち上げ、農林水産省主催の「フード・アクション・ニッポンアワード」で受賞した。 持続可能な農業を目指し、市場では、流通販路を拡大し、輸送で発生するCO2の初声を極力抑えるよう他県や海外農産物の販売量を減らして、近隣生産者からの出荷を主に扱う。また、農産物は天候に左右されるため、販売できない野菜が出た場合、廃棄処分にせずに地域の子ども食堂などに無償で提供している。 高橋伸行代表は、「青果を通じて社会奉仕をしながら、SDGsのゴールを目指していきたい」と話している。


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鎌倉彫の写真と田邊さん

鎌倉彫の魅力を発信

高校生が小さな写真展開催

鎌倉の伝統工芸品・鎌倉彫の魅力を伝えたいと、県立七里ガ浜高校3年の田邊真和(まな)さんが、6月中旬から鎌倉市雪ノ下のさかい内科・胃腸科クリニックの待合室に鎌倉彫の写真を展示されており、好評だ。 鎌倉彫の作品だけでなく、職人さんの手や彫刻刀、制作過程の写真など12点のパネル展示で、説明書きも添えられている。 田邊さんは、高校1年生の地域理解の校外学習で鎌倉彫店に展示されていた鎌倉彫に出会った。幼いころから、陶器や漆器に馴染んでいたこともあり、その彫りの味わいと木の温もり、深みのある色調などに魅かれ、鎌倉彫のことを知りたいと機会をうかがっていた。2年になって、鎌倉彫工芸館を訪れた。高校生の田邊さんが専門店の扉を開けるのは勇気がいることだったが、事情を話すと、事務所の人がいろいろなことを説明してくれて、職人さんも紹介してくれた。何回も訪れるうちに、職人さんとの話す場を設けてもらったり、仕事場を見学させてもらい、写真もたくさん撮った。 この伝統工芸品のことを多くの人に知ってもらいたいと、高校のOBで、同校で開かれた講話会で話を聞いたことのある医師の酒井太郎さんに相談したところ、「公共の会場で写真の展示やワークショップなどができたらいいが、コロナ禍で今は難しい。とりあえず、自分の病院で展示しましょう」といってもらい、同工芸館の協力も得て、展示が実現した。同院の待合室は、壁にピクチャーレールが設置されていて、開院当初からギャラリーとして使用されている。月替わりで様々な展示をしているので患者さんにも喜ばれているという。 田邊さんは「工芸館は心のよりどころになっている。酒井先生のおかげで展示できたことは自信にもつながった。これからも鎌倉彫のために何かしていけたらうれしい」と話している。


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田越川一斉清掃2年ぶり

大型ゴミの収集も

「仲間や家族と一緒に田越川の掃除をしながら、水生生物や水辺の植物などに触れ、豊かな逗子の自然を体感しよう」をテーマに、6月12日逗子の田越川一斉清掃が行われた。好天の下、JRや京急、市役所、郵便局、地元スーパーの職員、逗子開成中学校の生徒や市民ら約650人が参加した=写真は逗子市役所提供。 昨年はコロナ禍で中止されたため、2年ぶりの開催で、パソコンやタイヤなど大きなゴミもあった。 回収されたごみの量は上流で220㎏、下流で1480㎏、総量が1700㎏になり、一昨年の440㎏を大きく上回った。 田越川・久木川一斉清掃実行委員会の副代表・北川雄平さんは「ゴミは年々減ってきているが、今回は2年分のゴミだった。河口の清掃もしばらくぶりに行った」と話していた。自然に親しもうと子ども連れの姿も目立ったという。


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多くのメディアで取り上げられている巌流島の決闘=東京新聞2021年5月19日朝刊

文学つれづれ(189)

吉川英治『宮本武蔵』(十五) 赤羽根龍夫

その後、お通はどうなったであろうか。 武蔵を求めて旅を続けるお通は、故郷の姫路までやってきて武蔵の姉のお銀の噂を聞き、会いに行く途中お杉婆に捕まってしまう。 お杉婆は故郷の播磨に帰ってきた武蔵の弟子の城太郎に捕らえられる。城太郎はお杉婆を、お通と武蔵を苦しめる元凶と洞穴に閉じ込めてしまう。 お通は武蔵が近々小倉で小次郎と真剣勝負をすると聞かされ、武蔵に会いに行こうとするが、城太郎に捕まったお杉婆のことが気がかりで豪雨の中を探しにいく。 洞穴の中に閉じ込められているお杉婆を見つけたお通は必死になって助け出そうとするが、お杉婆はお通に罵詈雑言を浴びせ、洞穴から助け出してくれたお通の黒髪を引きずりまわし、踏んだり打ったりの折檻を加える。死んだようにぐったりしたお通を見て婆はハッと気が付く。
恐ろしや、恐ろしや。子ゆえの闇とは、このことか。わが子可愛さにひとの子には、鬼となっていたか…お通よ、其方(そなた)にも親はあったものにのう。親御から見たらこのばばは、子のかたきじゃ、羅刹(らせつ)じゃ、…ああわしのすがたは夜叉(やしゃ)ともみえたであろう!
やっとのことで息を吹き返したお通を婆は心を込めて看病し、お通を武蔵に会わせようと、豊前通いの便船を待つ。 一方、江戸城で二代将軍秀忠を鉄砲で狙う大罪を犯そうとしたお杉婆の息子・又八は沢庵和尚に命を救われ、僧形になり、武蔵の勧めで愚堂和尚の弟子になったが、自分が生ませた子を背負って川原で惨めな姿で物売りをしている朱美を見つけて、還俗して一緒に暮らす決心をする。二人もまた武蔵に会おうと小倉へと向かう。 なぜ巌流島で武蔵と、細川藩の兵法指南になった小次郎が決闘することになったのであろう。その原因を吉川英治は「小次郎でも自分でもない気がする。むしろ周囲だと思う」と武蔵に述懐させ次のように云う。
いつとはなく、二人を対峙させ、二人を試合わせてみることに、世間が先に、興味や期待を大きくして、「やるそうだ」といい、「やる」と断じ、遂に、「いつの何日」と、まだうわさのうちから、日までも取り沙汰されて来たのだった。
武蔵は自分が世間の評判になったことを後悔するが、同時に生きていくこと自体が「世間の恩」であるので、世間を無視することはできないと思う。 この辺りは賛否両論がある所であるが、吉川英治の「世間」に対する考え方がよく出ている。とに角、お通や又八、お杉婆、伊織、城太郎、夢想権之助など武蔵を慕う人々が小倉へと集まって行く。 武蔵を迎え討つ小次郎は援護者である藩の重臣・岩間角兵衛の心配りを受け、多くの賛同者の訪問を迎え、自分を大きく見せるためゆったりとした時間を送っていた。 一方武蔵は、あちこちで自分を迎え、見送ろうとする人々の目を避けるようにして単身小倉にやって来る。そして藩の家老が用意した宿舎を避けて、海辺の廻船問屋に宿を求めた。なぜ武蔵は廻船問屋を宿としたのか。 武蔵の慎みでも藩の重臣が一方に加担して迷惑をかけることになることを避ける配慮でもない。この時点で既に巌流島での二人の戦いは始まっていたのである。武蔵は自分の勝利を確信していた。なぜか?
(神奈川歯科大名誉教授)


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琴教室の稽古風景=月光庵で

琴を通して心豊かな人生を

鎌倉・月光庵で教室スタート

鎌倉市小町の月光庵で、4月から琴の教室が始まった。 「家にお琴があるけれど弾いたことがない」「昔習ったけど忘れたのでまた教わりたい」「琴を弾いてみたい」という人のために、気軽に琴を楽しめる場をつくりたいと、庵主で、茶道裏千家の正教授・岩波宗正(そうせい)さんが、月光庵の茶室を琴の教室用に提供することにした。 教室を担当するのは、庵主のお茶の弟子でもある、芸名・菊色彩さん。 菊色さんは、芸歴40年の生田流師範で、3歳から琴を習い始め、小学4年生のときコンクールで入賞した。その後、師範となり、ずっと稽古を続けている。 日本の伝統文化の琴を普及させることは、SDGsの開発目標の教育や健康、環境などの分野につながると意欲を燃やしている。伝統の大切さや作法なども自然と身につけられ、稽古後は月光庵の茶室でお茶とお菓子をいただくことができる。 稽古に使う琴や爪などは用意されているので、 何も持参する必要がない。現在、尾崎弓さん(10)と小池ますみさん(7)が稽古に励んでいる。 菊色さんは、「琴を通して老若男女にかかわらず、日本の伝統文化に触れ、心豊かな人生をすごしませんか」と参加を呼びかけている。 京急バス「大学前」バス停前。
問い合わせ月光庵 0467・61・3255※詳細は月光庵ホームページ参照。


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読書『湘南のお地蔵さま』『続湘南のお地蔵さま』

中島淳一著

藤沢市在住の中島淳一さん(65)が5月に『続 湘南のお地蔵さま』を出版した=写真。 4年前に発行された『湘南のお地蔵さま』の続編で、前編は月刊紙「江ノ電沿線新聞」に2000年から4年にわたる連載をまとめたもの、今回は2017年から今年4月までのもので、連載は今も続いている。 著者は、高校のときから仏像に興味を持ち、大学でも仏像研究のサークルに入り、奈良・京都の寺を巡った。藤沢市役所に就職し、藤沢市文書館で文化財の調査などに携わった。2017年に定年退職し、現在茅ヶ崎市史編さん委員会の委員を務めている。 道端や寺などでよく見かける仏さまで、お坊さんの姿をしていて、たくさんの人に親しまれている「お地蔵さま」を紹介しようと湘南に地域をしぼり、何々地蔵と名前のあるものを取り上げた。地域は、鎌倉・藤沢・茅ヶ崎・葉山・逗子・横須賀・箱根など。鎌倉の月影地蔵やどこもく地蔵、藤沢の北向地蔵、箱根の六道地蔵などよく知られているお地蔵さまから、花咲地蔵(鎌倉)や平松地蔵(葉山)など地元で親しまれている地蔵さままで50体ずつ掲載されている。 横須賀の勝軍地蔵は甲冑を着け、兜を戴き馬に乗っている珍しい姿をしていて、最近になって拝むことができるようになったといい、横須賀市久里浜の見返り地蔵は、振り向いて慈悲の心で私たちを救ってくださるかのような姿で趣きがあるという。「自分自身、健康面でもお地蔵さまに助けてもらい、お地蔵さまが人とのつながりや道筋をつけてくださるように感じる」と著者は話す。 交通手段が記載されているので参拝に便利。 815円、続編は880円、江ノ電沿線新聞社刊
0466・26・3028



終の棲み家を考える87

値段は正直シリーズ〈屋根編1〉

家を創る時外観のデザインをどうするかは大きな要素です。和風の家でも洋風の家でも屋根をどんな形にするかでイメージが大きく変わります。 屋根材には大きく分けて瓦・スレート・金属・樹脂などが有り、意匠と予算に合わせて選ぶことになります。屋根の工事費の内容を考えると、家全体の躯体は別にして、垂木・野地・下葺き材・仕上げ材となっています。 予算に合わせて仕上げ材の事が気になると思いますが、本当に大事な事は垂木・野地・下葺き材です。比較的安価なカラーベストを選択した場合、垂木のサイズが小さかったり、野地板が薄かったりしてもお客様にはわかりません。ましてや下葺き材がどんなもので施工されているかなど、知りようがありません。 費用を抑えるためには性能のよいものは使えないので当然安価なものが使われています。垂木のサイズが小さく・野地板が薄く・下葺き材が安価なものでは長持ちしません。屋根に人は乗らない方がよいのですが、このような屋根に人が乗ると必ずしなります。 施工したてのカラーベストは弾力があるので割れませんが、経年すると固くなり割れることが多くなります。素人には理由がわからない「雨漏り」がここにあります。
日向建設
鎌倉市大船1―15―3
0467・47・5454
http://www.hyuuga.co.jp/


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「ひと」
鎌倉ガイド協会の会長に就任した

石渡孝二(いしわたこうじ)さん

発足30年を迎えた鎌倉ガイド協会の会長に5月に就任した。新型コロナウイルス感染症流行の影響をもろに受け、協会の観光ガイド活動は休止状態。財政的にも苦しい中バトンを引き継いだ。「覚悟の上で引き受けたのだからやるしかない」と、活動再開の時期を探りながら奮闘している。 来年に向け協会には新しい任務も生まれた。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が来年1月から放映されるのを契機に設立された鎌倉市の大河ドラマ推進協議会。その一員として、関連ツアーのコース設定を任された。   「せっかくのチャンス、大いに協力していこう」と、6月2日には鎌倉文華館鶴岡ミュージアムを出発点とする史跡コースを提案、市の副市長や大河ドラマ担当者を案内した。「ドラマ関連の講座を設けることも考えている」と語る。 ガイド協会は、1991年鎌倉市主催のシルバーガイド養成講座を修了した高齢者31人が鎌倉シルバー・ボランティアガイド協会を設立して誕生した。2008年にNPO法人化。現在会員128人。   協会が企画する「古都鎌倉史跡めぐり」や、個人、グループ、修学旅行生への観光ガイドを続けてきた。利用者は年間2万人だったが、コロナ禍で昨年2月からゼロに。「観光客も案内する方も命がかかっているからね。早くノーマルに戻ってほしい」と切に願う。 鎌倉生まれで、鎌倉第一小、第一中、鎌倉高校に通い、37歳まで鎌倉に住んだ。だから鎌倉は自分の庭のように熟知している。主に金融畑で働いた。「健康とボケ防止に」と、現役引退2年後の69歳の時にガイド協会に入会した。 ガイド冥利(みょうり)につきるのは、お客さんが満足した表情を見せたり、最後に拍手をしてくれたりした時だ。お客さんにどれだけの知識があるのかを探って、レベルにあった話をするのをいつも心がけているという。 80歳。足取りは軽快そのもの。健康のこつは?「毎日やることがあること」「目標を持って一日一日を大切に生きる」ときっぱり。 横浜市栄区庄戸の住宅街に妻と暮らす。地元の「庄戸の元気づくり」「瀬上さとやまもりの会」といったサークルにも積極的に参加している。趣味は?との問いに「ガイド協会だね」と言って笑った。
(文・写真 三浦準司)


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健康百科通信(139)

高齢者の心不全
  内科医 吉岡 顕一

日ごろ、地域の高齢者医療や、生活習慣病の予防に取り組んでいますが、コロナ禍で家にこもる人が増えている昨今、足腰が弱っている高齢者が目立ちます。 さらに、生活習慣の欧米化に伴う肥満、高血圧、糖尿病による虚血性心疾患の増加により、心不全の高齢者が急増しています。少子高齢化が進んでいる近年、高齢者心不全が急増している状態は「心不全パンデミック」と呼ばれることになり、日本でも現実的な社会の脅威となりつつあります。 高齢者心不全の治療目標は、健康寿命の延長と再入院の回避、生活の質の改善、そしてフレイルの予防・改善です。 そのため、心不全の治療は医療機関の入院治療のみならず、退院後は地域全体でかかりつけ医、在宅医を中心に、さまざまな職種の人たちの連携、家族の協力で、心不全の発症や重症化を防ぐ体制づくりが大切です。 当院では、皆様の健康維持のために管理栄養士を招いての栄養相談、体操教室を開いています。参加希望の方はお問い合わせください。

吉岡内科医院院長
鎌倉市扇ガ谷1―9―4
0467・25・5536


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1971年7月の全線開通式典( 湘南モノレール提供)

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開業当時の大船駅( 湘南モノレール提供)

湘南モノレール全線開通50周年

記念イベント続々 メージアップ戦略も

鎌倉市の大船から藤沢市の湘南江の島まで、8駅6・6㌔を14分で結ぶ湘南モノレール(本社鎌倉市・尾渡英生社長)は、7月2日に全線開通50周年を迎える。同社で様々な企画を手掛け、湘南モノレールのイメージアップを図ってきた花香晋生広報課長に、半世紀の歴史や今後の取り組みをうかがった。

50周年記念イベント

全線開通50周年の催しを教えてください。

湘南モノレールは昨年、全線開業50周年を迎えました。1970年3月7日に大船─西鎌倉間の5駅で開業したのです。そして71年7月2日湘南江の島駅までの全線が開通し、今日に至っています。 全線開通50周年の記念イベントは、今後1年にわたり様々な形で行います。その一環として記念ロゴマークを募集しました。多くの力作の中から 既に最優秀賞などが決まっています。今月2日に湘南江の島駅で行う記念セレモニーで初公開し、各種イベントやPR等で使用する他、ヘッドマークとして5601編成湘南レッドラインに取り付けて1年間運行します。 ただコロナ禍の影響で、記念セレモニーは、縮小せざるを得なくなりました。関係者のみの催しとなります。

ほかにはどんな企画を予定していますか。

全線開通時の硬券を再現した8駅入場券セットを1000セット限定販売する予定です。記 念切符の発売日には、良い通し番号を求めて早朝から長蛇の列ができます。これを防ぐための販売方法など検討しています。 また、「全線開通50周年記念2022湘南モノレールカレンダーフォトコンテスト」の作品を8月31日まで募集しています。テーマは「湘南モノレールと、その風景」。入賞作品は2022湘南モノレールカレンダーに採用するため作品は横構図でカラー写真に限定、湘南モノレールと沿線の季節感あふれる風景など個性豊かな作品をお待ちしています。ほかにも様々な企画があります。

新型コロナ対策

新型コロナ対策をどのように行っていますか。

車内換気や定期清掃、消毒液やビニールカーテンの構内設置、従業員の健康管理など基本的な対策を徹底しています。さらに大船駅のトイレ洗面台の自動水栓取付、全7編成21両の車内を抗ウイルス・抗菌コーティング加工、全8駅の手を触れやすい部分などを抗ウイルス・抗菌コーティング加工、当社WEBサイトでの定期乗車券購入申込書や遅延証明書の印刷ダウンロード開始、大船駅・湘南町屋駅・湘南江の島駅に駅トイレ便座シートクリーナー設置などの対策をしてきました。 また、WEBサイトでは列車混雑状況に関するお知らせを随時掲載しています。平日の大船駅では、午前7時~8時半の時間帯に混雑が発生しやすくなっていますので、可能な限り分散したご利用をお願いします。

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全線開通記念号( 湘南モノレール提供)

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建設中の湘南深沢駅周辺( 湘南モノレール提供)

モノレール開設の経緯

この地にモノレールが導入された経緯は。

日本は1950年代半ばからの高度経済成長期に、自動車の数が急増し、道路整備が追い付かなかったこともあって都市部では大渋滞が頻発するようになりました。観光地として人気の江の島周辺も混雑がひどくなりました。そこで注目されたのがモノレールです。都市の街路上空のスペースを有効活用でき、地下鉄と比べて建設費は安く、工期も短くて済むためです。 日本のモノレール第1号は、地方鉄道法に基づく鉄道路線としては、東京都交通局による上野動物園モノレール(上野懸垂線)とされています。1957年12月に運行が開始されました。そして、前回の東京オリンピック直前の1964年9月には、羽田と浜松町を結ぶ東京モノレールが開業し、本格的な都市交通としてのモノレールの活用が始まりました。 各地でモノレールが建設される中、新たな候補地として注目されたのが、鎌倉の大船と藤沢の片瀬を結ぶルートです。ここには当時、京浜急行電鉄が運営する有料の京浜急行自動車専用道路があり、この上を通せば用地確保が容易に進むという目算がありました。観光ルートとしてだけでなく沿線には三菱電機や国鉄などの工場があり十分な通勤需要も見込まれました。 この計画を進めた日本エアウェイは1964年9月11日、運輸大臣宛に「懸垂式鉄道敷設免許申請書」(大船─片瀬東浜)を提出しました。日本国内の公共交通機関としては初の懸垂式(サフェージュ式)モノレールです。

申請から開業まで約6年、全線開通まで約7年。結構、時間がかかったのですね。

次々と困難に直面したためです。まず、鉄道免許を取得するのに丸1年もかかりました。当時の地方鉄道法第4条は「地方鉄道は之を道路に敷設することを得ず」と定めていて原則的に道路上に鉄道の敷設はできなかったのです。事務的なレベルでの解決は難しく政治的な解決が図られました。 その後も、建設資金調達の問題や、用地取得の難航にも見舞われました。 JR横須賀線(当時は国鉄)を横断する部分では、横須賀線の終電から始発までの僅か3時間で、必要な作業を終えなければなりませんでした。全長33㍍、重量25㌧の巨大な軌道桁を、ウインチとコロを用いて対岸に向かって送り出す作業です。当時関わった人たちのチームワークによって時間内に無事完了できました。 こうした歴史は当社WEBサイトに詳しく書いてあります。横須賀線を横断する難工事の動画などもあるのでご覧下さい。

鎌倉朝日新聞社

ピンクリボン号

鎌倉朝日新聞社

片瀬山駅の駅名板

イメージアップ戦略

近年イメージアップ戦略が成功していますね。

湘南ベルマーレのオフィシャルクラブパートナーとなって以来、関連企画が好評です。今年3月には今シーズンの躍進を祈念して、片瀬山駅を湘南ベルマーレ仕様に変更しました。「片瀬」は「かたせ=勝たせ」と読むこともできることから、サッカーの勝利(勝ち点3)を得るという意味合いも込めて、駅名板を「GET3山」(勝たせ山)とし、今シーズン終了まで設置しています。

乳がんに関する知識の普及啓発などを目的とした「ピンクリボン号」も注目を集めています。

湘南モノレールの車両は、編成ごとに異なる色のラインが入っています。2016年に新たにピンクのラインの新車両が入ると知り、「それならピンクリボン号にしてはどうか」と提案しました。そして「ピンクリボンかながわ」の方々の協力などで外装にピンクリボンのラッピングを付けたピンクリボン号が誕生しました。昨年10月にリニューアルを行い、車体ラッピングの追加や新ヘッドマークの装着をしました。 この車両を見たことをきっかけに、乳がん検診を受け、助かる人が増えることを願います。乳がん対策のみならず、広く利用者の方々の健康増進につながるような形に育てていきたいと思います。

コロナ後を見据えた取り組みは。

湘南モノレールの運行本数は1時間に最大8本。7編成ある車両のうち、予備と点検中を除く5編成を動かしています。乗降客数は2019年に約1130万人に達しましたが、昨年はコロナ禍で減少し、今年も19年の水準には戻っていません。 とはいえ、来年は、鎌倉を舞台としたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放送され、観光客増が見込まれます。沿線の深沢地区などでは今後、新たな街づくりが進み、鎌倉市役所本庁舎や体育館などの移転も予定されています。コロナ禍をきっかけとした働き方の変化などで乗降客数の急増は見込みにくい時代ですが様々な企画を通して湘南モノレールに親しんでいただきたいと思います。

湘南モノレール 0467・45・3181


鎌倉朝日新聞社

『日本的霊性』鈴木大拙 著

心のふる里を行く(40)

大拙の「日本的霊性」を活用せよ 池田雅之

これから世界は、日本はどこへ向かうのであろうか。私たち日本人が生き延びていくためにはどうしたらよいであろう。危機と混乱の時代に遭遇したかつての日本の先達たちは、国難にどのように対応してきたのか。その一例を仏教哲学者の鈴木大拙の『日本的霊性』(角川ソフィア文庫)にヒントを探ってみたい。 但し同著はコロナウイルス感染症対策のために書かれた著作ではない。1944年(昭和19)、太平洋戦争の最中に書かれた大拙渾身の作といってよいが、国難への立ち向かい方の範例として紹介したい。 大拙はすでにこの戦争で日本が負けることを予測し、敗戦後の日本をいかに立ち直らせるかに腐心した。この日本復興のためのキーワードとして、大拙は「霊性」というコトバを用いた。英語のスピリチュアリティの訳語である。日本人一人ひとりの無意識の中に眠っている精神性あるいは叡智を指している。具体的には理解しにくいコトバだが、大拙はこの「霊性」一語に日本再興のための鍵を託している。日本人が戦後の荒廃から日本を復活させるには、内なる精神性、つまり霊性という叡智を掘り起こし、言語化し、活用する必要がある、と説いている。 大拙の「日本的霊性」とは、平たく言えば人間の持つ理性や合理性や感性を超えた、無意識に潜む智恵(無分別智)のことを指している。大拙はその霊性を歴史的に遡り、取り出し、それを言語化するという力業をこの労作で行っているのである。 大拙は霊性こそが、日本の精神史を連綿と織りなしてきたという。そして、その霊性への覚醒が起ったのが、鎌倉新仏教(浄土宗、浄土真宗、臨済宗、日蓮宗など)の時代(12世紀中頃~13世紀)であったという。鎌倉新仏教が生まれた時代は、戦乱や天災が続いた時代でもあり、当時の鎌倉の武士や農民は仏教の教えにすがり、帰依する者が多かった。新仏教が武士や民衆のための教えとして都市や村に広まっていった。こうして新たな生活に根ざした精神文化が鎌倉に誕生した。これが日本的霊性を芽生えさせることとなったのだ。 日本が1945年、敗戦という亡国の危機に瀕した時、大拙は、鎌倉時代に起った民衆の意識革命ともいうべき日本的霊性の覚醒のありさまを調べ上げ、記述しておくべき緊急性を痛感した。「これからの日本」を見据えていたのである。 そうであれば、2020年代の「これからの日本」の再生のためのよすがとは一体何であろうか。少なくとも、一つの道は、大拙の説く「日本的霊性」を繙き、これを現代へ生かす術を考えていくことであろう。そのためには、私たちによる「日本的霊性」の現代的応用が求められているのである。
(早稲田大学名誉教授・鎌倉てらこや顧問)


鎌倉朝日新聞社

モージョーパン村の小学校に牛乳配給

村の子たちに牛乳を飲ませてあげて欲しい
ミャンマー ファミリークリニックと菜園の会(39)

  代表理事 名知仁子

「村の子たちに牛乳を飲ませてあげて欲しい」ミャンマーのヤンゴンで牛乳とヨーグルトを販売している友人のミャンマー人の言葉です。 彼は日本で12年間、乳製品の業界とは無関係の仕事をしていました。2019年、母親がガンに罹り、その健康を守りたい一心で彼はヨーグルトを作り始めたのです。ヨーグルトも牛乳も日本クオリティです。その彼から「MFCGが回っている村の子どもたちに栄養をとってもらいたい」と申し出を受けました。 6月4日モージョーパン村で、5歳から12歳まで67人の子どもたちのうち17人が初めて牛乳を飲みました。我々MFCGのメンバーもその瞬間を共有できてうれしくなりました。大切に、大切に、届けられた牛乳は彼の温かな気持ちも加わり、とても濃厚だったと思います。 この村は、巡回している16村の中でも住民の生活水準が低く、日当が2000チャット(140円程度)も得られない人たちも多くいます。2月1日に起こった国軍による政権の変化は、村の住民生活への2020年からのコロナ感染の影響を加速的に悪化させています。食べ物が手に入りにくくなり(都市からの流通が停止・ステイホームで農作業さえできなくなった・カシューナッツなどの作物の輸出が困難になり現金収入がなくなったなど)、仕事を失い、さらに、現金収入の道が閉ざされたことなどの影響を強く受けています。 5カ月たった現在も市民と国軍との襲撃戦は主に地方で盛んに行われています。なぜなら、各地方にはカレン族やカチン族の少数民族がおり、彼らから銃の扱い方などのトレーニングを受けているからです。 皮肉なことに歴史的な背景として、以前、このビルマ族と少数民族との紛争が頻繁に生じていて、少数民族は独自に軍隊のような武装勢力が必要だったからです。今回は国軍との戦いに勝ち、自由を取り戻すために彼らは連携しています。 MFCGはこれから村への食料支援を開始する予定です。これも国軍との関係があり、大々的には告知しないようにしています。この状況下でも当会の活動が継続できるのは皆さんの温かい応援のおかげと思います。これからもご支援をよろしくお願いします。寄付も受け付けています。
事務局 東京荒川区東尾久8―41―23
FAX 03・6807・7499
myanmarfcg.info@gmail.com
http://mfcg.or.jp/
https://www.facebook.com/mfcg.or.jp

【この記事は清興建設提供】



はじめましょう

●楽譜不要ゴスペルサークル第4水曜夜 玉縄青会館講師 元VOJAメンバー
0466・87・5019
●英・仏会話初歩から芸術館徒歩3分。Pあり。元CA
0467・43・4788



お知らせ

●槐の会 第14回写真展 作品募集
7月18日まで。テーマは「昭和・平成の鶴岡八幡宮」。
どなたでも応募可。
事務局 22 ・0315
●第11回公園で見つけた素敵な一瞬フォトコンテスト
11月3日まで。鎌倉市内の公園で撮影した季節の風景や動植物の写真を募集。
詳細は市公園協会 45・2750
●湘南台文化センター
【こども館ワークショップ】小・中学生と保護者同伴の幼児対象。▽風鈴を作ろう7月3 ・4・10日10時・13時半・15時半。▽ヨットを作って競争しよう17日~8月31日10時・13時半。各2百円。
【宇宙劇場(プラネタリウム)】
▽季節の星座・60分生解説7月10日18時半、要予約。▽キッズプラネタリウム 7月31日まで。各5百円、中学生以下2百円。
0466・45・1500
★「祝日」五輪で変更
7月19日(海の日)→22日
10月11日(スポーツの日)→7月23日(五輪開会式)
8月11日(山の日)→8月8日(五輪閉会式)



購入新図書のリスト抄

鎌倉市中央図書館(3月分)

鎌倉市中央図書館(5月分) 鎌倉市中央図書館(25・2611)は5月に一般222冊、児童書24冊を収蔵した。一般的なものは下記の通り。 ▼「読書大全-世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊」堀内勉著 日経BP ▼「ドレミファソラシは虹の七色?-知られざる「共感覚」の世界」伊藤浩介著 光文社(光文社新書) ▼「鴻上尚史のますますほがらか人生相談-息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋」鴻上尚史著 朝日新聞出版▼「ブッダが説いた幸せな生き方」今枝由郎著(岩波新書) ▼「広重の浮世絵と地形で読み解く江戸の秘密」竹村公太郎著 集英社 ▼「すぐにもらえるお金と使えるサービス-困ったときに役立つ!社会保障活用ガイド」溝口知実著・監修 自由国民社 ▼「数学に魅せられて、科学を見失う-物理学と「美しさ」の罠」ザビーネ・ホッセンフェルダー著 みすず書房  ▼「庭にほしい木と草の本-食べるつかうあそぶ散歩道でも楽しむ」草木屋著 農山漁村文化協会 ▼「辞書編集者が選ぶ美しい日本語101-文学作品から知る一○○年残したいことば」神永暁著 時事通信出版局 ▼「季節を家につれてくる-旬をみつける小さなごちそう」森下美津子著 京都新聞出版センター ▼「プラスチックごみ問題入門-安心して暮らせる未来のために」栗岡理子著 緑風出版(プロブレムQ&A) ▼「湘南波の下水族館」佐藤輝著 鍵井靖章著 工藤孝浩監修 青菁社


鎌倉朝日新聞社

「朝」水彩画12号

第28回 コンポジション展

歌と名画で十二支をたどる

7月7~11日鎌倉芸術館。絵画制作に励んでいる約50人の水彩、油彩、アクリル画などの作品約200点を展示。 実行委員長の黒川さんは日頃の成果を見ていただくと同時に地域の美術文化の振興に少しでも寄与できればと語る。無料。
問い合わせ黒川方 090・4964・4866


鎌倉朝日新聞社

小原祥邨《金魚鉢に猫》(縁側)1931 年 ※前期展示

み る

▼川喜多映画記念館
企画展「映画祭のすゝめ―ぐるり映画ポスターの旅」9月12日まで。国際映画祭を通して日本映画を紹介する役割を担った川喜多夫妻の関連資料や映画祭のポスター、記念写真など。2百円。
▽関連上映 7月6・8・10日10時半、7・9・11日14時「道」。6・8・10日14時、7・9・11日10時半「昼顔」。 16・18日14時、17・18日10時半「スパイの妻」。20・22・24日10時半、21・23・25日14時「女と男のいる舗道」。
20・22・24日14時、21・23・25日10時半「ノスタルジア」各千円、中学生以下5百円。▽特別上映 7月17日13時「スパイの妻」+トークイベント1600円、中学生以下8百円。
23 ・2500(5面にご案内)
▼招き猫亭コレクション 「夏―猫ビヨリ」
8月29日まで藤沢市アートスペース。アートコレクターの招き猫亭氏が約40年かけて蒐集した猫にまつわる美術作品を2018年に藤沢市へ寄贈。歌川国芳やビアズリーの作品など夏をテーマに約130点を展示。
2百円。▽ワークショップ 「描いて、つけて、遊ぼう!猫面」7月18日14時、3百円。4日から申込。
0466・30・1816
▼あーすぷらざの催し
▽特別展「生と死の間で ホロコーストとユダヤ人救済の物語」 8月29日まで。第二次世界大戦中のヨーロッパでのユダヤ人救済の物語を紹介。杉原千畝に救われた人の証言など。4百円。
▽第21回カナガワビエンナーレ国際児童画展 7月6日~8月22日。世界57カ国1地域、県内と全国の外国人学校の作品から入賞作品520点を展示。無料。要予約。
045・896・2121
▼企画展「夏色美人―清方がみた夏げしき」
7月2日~8月22日鏑木清方記念美術館。清方が描いた夏の景色を美人画や風景画、清方意匠の浴衣などで紹介。2百円。
▽夏休み親子鑑賞 会期中、小・中学生と同伴者は観覧料無料。▽親子で美術館へ行ってみよう 7月28日9時半、4歳~小3の親子対象。鑑賞マナーと日本画のワークショップ。無料。▽夏休み子ども参加プログラム 小~高校生対象。7月29 ・30日9時半、日本画。千円。8月5・6日、木版画。8百円。2日から申込。
23・6405
▼企画展「 human nature Dai Fujiwara 人の中にしかない自然 藤原大」
7月17日~9月5日茅ヶ崎市美術館。先端技術を駆使した創作活動で世界的に高い評価をうける藤原大の国内美術館で初の個展。8百円。▽アーティストトーク7月22日・8月21日、各日11時・14時。無料。
88・1177
▼特別展「重要文化財修理完成記念 十王図」
7月17日~8月29日県立歴史博物館。人の死後に亡者の罪の軽重をただすと考えられた10人の判官を描いた十王図の5年にわたる修理事業が完了し、全幅を修理後初公開。9百円。要予約。
045 ・201・0926
▼佐藤さとる展 「コロボックル物語」とともに
7月22日~9月26日神奈川近代文学館。深い知恵をもつ小さな小人と人々の友情を描いたファンタジー、コロボックルシリーズの資料や画家・村上勉の原画など。5百円。
要予約。▽記念トーク 佐藤さとる講演会記録音声を聴く会 7月31日13時半。2007年の創作秘話について語った講演会の音声を写真と共に公開。無料。要申込。
045・622・6666




き く

▼ファイン・デュオによる室内楽 7月11日14時、藤沢リラホール。湘南モーツァルト愛好会例会。ヴァイオリン沼田園子さん、ピアノ蓼沼明美さんのモーツァルト「ヴァイオリン・ソナタ変ロ長調 K454」など。4500円。
046・872・1963 ▼かまくらジュニアストリングス第11回定期演奏会 7月25日14時、鎌倉生涯学習センター。小学生から高校生のヴァイオリンのアンサンブル。無料。当日先着60人。
河田方 080・1228・1088 ▼フレッシュコンサート 8月9日15時、鎌倉生涯学習センター。鎌倉音楽クラブ創立75周年記念、第65回(2019年度)鎌倉市小・中・高  学生音楽コンクール最高位入賞者14人のピアノ、ヴァイオリンなどの演奏。日本音楽コンクールピアノ部門第1位の山縣美季さんの特別演奏も。5百円。要申込。
齊藤方 070・3131 ・5971



まなぶ

▼発達障害等啓発講演会
7月12日10時。鎌倉生涯学習センター。鎌倉市在住・在勤・在学対象。発達に課題のある子どもの理解と支援と子どもの発達に合わせた接し方とポイント。講師は発達障害支援センターかながわ心理士・小林直人さん。無料。要申込。託児有。
鎌倉市発達支援室 23・5130
▼親子で楽しむ書道教室
7月23日14時、鎌倉生涯学習センター。小1~3と保護者対象。無料。要申込。
日本総合書芸院 23・2100
▼市民セミナー「あなたの耳 大丈夫?」
7月27日14時、深沢学習センター。難聴の解説と耳年齢の測定。イヤホン難聴や音楽療法の研究成果の発表も。講師は菱田博俊・啓子さん。無料。要申込。
音楽で健康を考える会メールhizanoriieneko@yahoo.co.jp
▼フレイル予防講演会
8月2日13時半、鎌倉生涯学習センター。みらいふる鎌倉主催。東京都健康長寿医療センター研究部長・金憲経さんの講演「コロナ禍における新しいフレイル予防について」。無料。要申込。
寺嶋方 44・5757
▼「税についての作文」対策セミナー
8月4日10時。オンラインセミナー。中学生対象。中学生の夏休みの宿題「税についての作文」を書くヒントや税金を様々な視点から考える。無料。
要申込。鎌倉税務署 22 ・5591
▼簡単英語で鎌倉ガイド
9月1・10・15日10時、全3回、大船学習センター。鎌倉市在住優先。外国人に鎌倉を案内する簡単な英語を学ぶ。無料。要申込。
45・7712



さんか

▼大船フラワーセンターハスの早朝開園
7月3・4・10・11・13~18・22~25日、8月7日7時開園。4百円。
46・2188
▼鎌倉ユネスコ協会
▽バザー 7月11日10~14時、同会深沢倉庫(深沢中学へ上る手前の信号右折の長屋)。毎月第2日曜。雨天開催。※献品受付 衣類・着物・雑貨・支援用食糧品。
久保方 44・9830
▽書きそんじハガキでアジア寺子屋支援 未使用切手・プリペイドカードなども。鎌倉市御成町11―40Mビル3Fへ。
小倉方 080・6602・9498
▼逗子多世代交流サロン
7月15日、Third Place仲町橋。
▽介護予防体操 10時、65歳以上で体を動かしたい人、65歳未満で体力低下を感じる人対象。
▽親子でゆるトレ 11時。未就園児と保護者対象。各3百円。
逗子市社会福祉協議会 046・873・8011
▼ふらっとカフェ鎌倉を通じて多世代交流
7月16日17時半、二階堂デイサービスセンター。食育講座、弁当のテイクアウト。子ども2百円、大人5百円。28日16時・17時、ソンベカフェ。店内飲食。子ども3百円、大人5百円。16~18時テイクアウト5百円。
メールで予約flatcafekamakura@gmail.com
※食料の寄付も受付。
渡邉方 090・5199・1654
▼北鎌倉・台峯の緑をともに
▽山の手入れ7月17日10時、山ノ内配水池横。
▽山歩き18日9時、山ノ内公会堂。
北鎌倉の景観を後世に伝える基金・望月方 45・7420
▼鎌倉市公園協会の催し
▽セミとトンボ―モグラ道を探そう 7月18日13時半、夫婦池公園。
▽写真教室―公園で撮ろう!素敵な一瞬 8月9日10時、鎌倉中央公園。生き物や風景を撮るコツ。各無料。要申込。
45・2750
▼ワッショイ!ずしかいがん 水辺の安全教室 7月18日9時。逗子海岸太陽の季節記念碑テント集合。潮汐、流れ、波、気象など水辺の基礎知識と砂浜、磯、河口などの特徴、それぞれのリスク対処法を学ぶ。百円。要申込。
逗子市観光協会 046・873・1111
▼教養センター サークル体験教室
鎌倉市在住・60歳以上対象。無料。▽自分史7月19日・8月16日、9時半。▽初中級写真7月6日・8月3日、13時。▽オカリナ7月26日・8月23日、13時半。▽フラダンス(未経験者)7月8日・8月22日、13時。▽デッサン7月17日・8月21日、13時半。▽陶芸7月16日、9時半。▽カラオケ7月6・20日・8月3・17日、10時。ほか24教室。3日前までに申込。
32・1221 ▼逗子の市(雨天中止)
亀岡八幡宮境内。
▽フリーマーケット7月30日9~15時。雑貨・衣類 ・手造り品など約20店。
▽骨董市31日8~15時。
出店者募集。片岡方 090・5442・3778
▼ペリー艦隊の航路と碇泊地を巡る
7月31日16時、シーサイドライン「海の公園柴口駅」改札口集合。アメリカン・アンカレッジ記念碑まで歩き、船でペリー艦隊の航路を巡り金沢沖からの夕景を楽しむ。2千円(乗船代、資料代、保険料含。交通費別)申込は往復ハガキで横浜市金沢区瀬戸15―13横濱金澤シティガイド協会。
045・787・0469



キッズ

▼ちびっこビーチセーバーパーク
7月1日~8月31日10~16時半(12~13時除く)60分1ターン。藤沢市片瀬東浜海水浴場。0歳~中学生と保護者対象。ゴミ拾い体験、海の勉強、アスレチックで遊ぶ。無料。
海さくら 03・5726・9941
▼夏休み子ども映画会
7月17日18時、玉縄学習センター。鎌倉市在住優先。「忍たま乱太郎 父の敵の段」「ムーミンゆめ・ゆめ・ゆめ」アニメ2本立て。無料。要申込。
44・2219
▼逗子海岸サマーフェスティバル
▽マリンスポーツを楽しもう 7月26日10時、小3~6対象。ヨット、サップ、カヤックなど。▽海に親しむ水泳体験2days 7月31日・8月1日9時、小1~4対象。海での泳ぎ方を体験。▽スノーケリング体験会@小坪 8月6日9時、小3~6対象。水中生物の観察。各千円。9日までに往復ハガキで申込。
詳細は逗子市観光協会 046・873・1111
▼こども写真教室&フォトフレームづくり
8月1日10時、鎌倉中央公園。小学生対象。3年生以下は保護者同伴。カメラの仕組みや上手な写真の撮り方と自然素材を使ったフォトフレームづくり。無料。メールで申込。info@kamakura-park.com鎌倉市公園協会
▼鎌倉生涯学習センター
▽チョークアート教室
8月19日10時・13時半、鎌倉市在住の小学生以上対象。▽食品サンプル製作体験 8月21日10時半・13時15分・14時半、夏っぽいメニューにフルーツをトッピングした食品サンプルを作る。各1500円。往復ハガキで鎌倉市小町1―10―5同センターへ申込。
▼虹色実験室 8月20日14時、腰越学習センター。鎌倉市在住の小学生以上優先。光の色を分ける分光器を作成し、太陽の光などでできる虹の形を観察する。5百円。往復ハガキで鎌倉市腰越864同センターへ申込。
▼子ども宇宙教室 8月22日10時、大船学習センター。鎌倉市在住の小4~中3優先。宇宙の話やロケットの打ち上げ、宇宙飛行士になるにはなど。無料。往復ハガキで鎌倉市大船2―1―26同センターへ申込。


鎌倉朝日新聞社

季節の心(57)

あてなるもの  佐伯 仁

●5王朝の“削り氷”
7月。炎暑。会いたくなるのは夏の涼しい顔。 枕草子があてなるもの=上品な物(42段)に挙げているのが「削った氷に甘味料を注ぎ、金属の器で飲む」とある。 源氏物語(蜻蛉)では女房達が貴重な氷と戯れる姿を描いている。 それ以前、奈良初期、朝廷では氷室に貯えた氷を臣下へ授ける氷室節会を開催。氷結する氷の神秘に神威を認め、その力を授かろうと祈った。 江戸期、加賀藩は城内の氷室に貯えた雪を「白山水」と名付け、徳川家へ献上。庶民も氷室饅頭を創案し、縁起物として贈答品とした。 現在、氷神を祀る氷室神社(奈良・東大寺手前)では5月1日、全国の製氷業者が祭祀を行う。 明治期、文明開化と共に高価な輸入氷が登場。商人たちは国産の天然氷の確保に励み、函館・五陵閣の氷を「函館氷」と名付けて販売した。 先年、五稜郭取材の折、市立図書館で見た「函館氷」のラベルは印象的。 1869年(明治2)、横浜・馬車道で開いた「氷水屋」で販売したあいすくりんがアイスクリームの事始め。歳月を越え、今も夏の氷は涼しい顔で人々を魅きつけている。
 匙なめて童たのしも夏氷   山口誓子



自宅でゆっくり読書のすすめ

~自然と共にある暮らしの本~鎌倉在住・読書アドバイザー0選

鎌倉朝日新聞社


鎌倉朝日新聞社

市民が環境問題の意見交換

ずし環境フェスティバル

さまざまな角度から環境問題に取り組む市内の団体が展示発表やワークショップなどを行う「ずし環境フェスティバル」が6月13日に市民交流センターと逗子文化プラザで催された=写真。 20回目の今年のテーマは「子どもたちのために!地球のために!」。午後からはメインの催しとなる「環境を考える集い」で各団体からの発表と意見交換が行われた。 市民と事業者が構成する「ずしし環境会議」の「まちなみと緑の創造部会」から、コロナ禍でもできる身近な植物観察の楽しみ方を樹木医でもある大塚隆之部会長がわかりやすく解説。「逗子プラごみゼロ活動を進める会」は、市内の約170の商店に実施したレジ袋の使用削減についての調査結果を報告し、レジ袋の辞退率は有料化前の約20%から76%へ上がっていることなどが示された。 小学5年生のとき授業をきっかけに同級生3人で環境問題に取り組むチーム「アラカイムア」を立ち上げた中学生から、海岸のプラごみをホタテ成分の洗剤で洗浄し、オリジナルのキーホルダーを作る活動や、天然ゴム製の消しゴムの販売を通して毎日使う消しゴムにも有害なプラスチック成分が含まれていることを啓発するなど、子どもならではの視点を活かした活動が評価を集めた。 実行委員の粟飯原留里子さん(85)は、1999年から継続してきた同フェスティバルを振り返り、「逗子の子どもたちの力を実感できたことが本当に嬉しい」と次世代の意識の高まりに希望を見い出していた。(K)


鎌倉朝日新聞社

災害時も自ら考え動く子に!

小学生が寺で防災デイキャンプ

逗葉地区と横浜市金沢区の災害ボランティア有志が一昨年から小学生の防災意識の育成を目的に始めた「てんでんこプロジェクト」が6月13日玉蔵院(葉山町一色)で「KIDS防災デイキャンプ」を行った=写真。 児童約30人は境内を避難所に想定し、地面に穴を掘り足置き台のブロックを設置する屋外トイレづくりや、テントの設営、耐熱性のあるポリ袋での湯せん調理や町防災安全課から提供されたアルファ米の使い方、バケツリレーやクイズなどで災害時に役立つ知識を楽しみながら学んだ。金沢区から親子4人で参加した家族は「昨年の体験が子どもたちには大きな収穫だったようだ」と話す。 今年5月には一昨年の台風15号で甚大な被害を受けた金沢区福浦・幸浦沿岸の被災地を訪れ、高波で屋内プールの窓が大破した「リネツ金沢」で当時の状況を聞く「防災遠足」を行った。 小学生への防災教育の意義について同プロジェクトの服部誠さん(44)は「ここで学んだ子が今はスタッフとなり、親も加わってくれるようになった。子どもが動くと親や学校や社会が動き始める」と小学生への防災教育が確実に将来の地域防災につながることを強調していた。  (K)


鎌倉朝日新聞社

展示スペースを提供する古屋さん

鎌倉朝日新聞社

2階のフリースペース

展示や集会に場所を提供

鎌倉の手打ちそば「宮前」

鎌倉市二階堂の大塔宮前の手打ちそば「宮前」で、半年ほど前から鎌倉の寺社や海などの四季折々の風景写真10数点が壁に並び、話題を呼んでいる。 この店は15年ほど前に元市会議員の古屋壽廣さん(78)が横須賀の老舗蕎麦店の職人から手ほどきを受けてはじめた店で、5年前に息子に引き継いでいる。店の壁に、古屋さんが趣味にしていて所属しているアマチュア写真クラブ「鎌倉フォトクラブ・ベアーズ」の写真を展示したところ、写真で鎌倉の知られざる景色などを目にでき、客から喜ばれているという。写真を通して客とのコミュニケーションがとれるようになったことも収穫だったという。 コロナ禍で展示会の機会も少なくなったことを聞き、古屋さんは、希望者に展示スペースを提供していくという。 また、地域のコミュニティの拠点として役立てればと、8月頃から店の2階の10畳ほどの広さの2間をフリースペースとして貸し出すことを考えている。料金は応相談。
問い合わせは古屋さん 090・3407・3700


鎌倉朝日新聞社

「救う会」が募金よびかけ

重い心臓病を患う葉山在住の森木花(きか)ちゃん(3歳)に海外での移植手術を!と「きかちゃんを救う会」が発足した。 1歳4カ月の時、おう吐や咳が続く症状を訴えたきかちゃんは「拡張型心筋症」と診断され、脳梗塞や感染症を併発。昨年3月には弱った心臓の血液循環を補助する補助人工心臓を装着したものの、同年11月に心不全が悪化し国内での手術を待つことが厳しい状況に。海外渡航移植の支援団体に相談したところ「救う会」の設立を勧められた。 支援に名乗りをあげたのはきかちゃんの兄が以前通っていた町内の幼稚園の保護者たち。ママ友の絆から生まれた同会が、きかちゃんと家族を支えて募金を開始する。米国コロンビア大学病院での手術に必要な目標額の3億5千万円は医療費の前払金や渡航滞在費、医療用チャーター機の経費など。予断を許さない病状のため、3カ月を目途に目標達成を目指す。葉山町と町社会福祉協議会の後援を得て、7月3日に葉山町立図書館で14時・16時の2回、地元説明会を予定。事前申し込みのオンライン参加も可能。
詳細はHP:https://www.think-about-kika.com
メール:kikachansmile@gmail.com  (K)


鎌倉朝日新聞社

スケッチ日和(45)

「挑戦」  黒川 明

材木座海岸で、男性が女性インストラクターからウィンドサーフィンの指導を受けているところに通りかかった。 男性はブームを握って仁王立ちだ。下半身はしっかりしている。年のころは50代か。白髪頭だから60代、いやいや腕のしわを見ると70代かもしれない。 とにかく挑戦するのに年齢は関係ないなぁと感心させられた。もうすぐ日没だ。特訓は続く。「日が暮れる前に帰ってくるのよ」5分で忘れた母の注意を思い出した。
水彩画31×41cm



鎌倉年中行事

7月

▼鶴岡八幡宮の七夕祭7日17時、鶴岡八幡宮。
▼大町・八雲神社例祭10日9時。関係者のみ。
▼亀岡八幡宮例祭 16日。関係者のみ。
▼三浦義明墓前祭 22日来迎寺。関係者のみ。
▼施餓鬼会 24日宝戒寺。関係者のみ。
▼荏柄天神社例祭24日16時半、宵宮、25日10時、例祭。関係者のみ。
▼天王祭 中止。小動神社・江の島八坂神社の合同祭礼。
▼鎌倉花火大会 中止
【海水浴場の開設】
●逗子海水浴場 7月16日〜9月5日
●葉山海水浴場(森戸、一色、長者ケ崎・大浜)7月2日〜8月31日
●藤沢市海水浴場
▽片瀬東浜7月3日〜9月3日▽片瀬西浜・鵠沼7月3日〜9月5日▽辻堂7月17日〜8月28日


プロムナード

梅雨といえば「しとしとと雨が降る中、紫陽花やカタツムリが主役」のようなイメージを持っていますが、近年の梅雨から現代の小学生たちの持つ梅雨のイメージを共有できるのか不安になる昨今です▼「新しい言葉が誕生することで変化すること」や「変化したから新しい言葉が誕生すること」など伝え残したい言葉もありますが、そのような情景や場面が減ることで自然と落ち着いていくように感じています▼令和時代において、江戸や鎌倉時代とは言葉も気候も大きく変化していることでしょう。過去を大切にしつつも、新しい時代に順応する必要もあると考えます▼コロナワクチン接種が進むことで、少しずつでも社会状況が好転することに期待します。(N)


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